「7月5日に大災害が起きる」に怯える小学生たち──大人の知らぬ間に学校で広まっていた“予言デマ”

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「2025年7月5日に日本で大災害が起きる」という流言が出回っている。香港や台湾ではこの話を信じて日本への渡航を控える旅行者が増えているというが、日本人で本当に信じている人は少数派だろう。では、子どもたちはどうだろうか。実は大人たちの知らないところで、彼らはずっと前からこのデマを刷り込まれていたのである。

「その頃、生きていたらね」と言い出した小学6年生の息子

 5月中旬、都内在住の40代会社員Aさんは、朝の食卓で小学6年生の息子がおかしなことを口にしたことに気づいた。Aさん一家は、7月5日・6日の週末を利用して大阪万博を見に行く旅行を計画していた。「楽しみだね」と妻が子どもたちに声をかけると、息子はため息まじりにこう言ったという。

「その頃、生きていたらね」

 Aさんが振り返る。

「『海が近いからやばいよ』とも言っていました。私は何を言っているのかと思いながらも、聞き流して新聞を読んでいました。子どもが変なことを言うのは日常茶飯事ですしね」

 その翌日、職場の同僚とランチをしていると、今度は後輩から「7月5日のこと、知っていますか」と話を振られたという。

「そこで初めて、デマが出回っていることを知ったんです。後輩にYahoo!ニュースを見せてもらって、日本の漫画がきっかけだったと知りました」(Aさん)

 今では、その漫画がたつき諒氏著の『私が見た未来』であることを知っている人が多いだろう。同作は1999年に出版され、2025年7月に大災害が発生するという“予言”が描かれていた。表紙には「大災害は2011年3月」と記されており、それが東日本大震災を予知していたとされて話題になり、次の“予言”も当たるのではという噂がアジア圏にまで広まったのだ。

なぜ小学6年生の息子が先に知っていた?

 同書は長らく絶版となっていたが、2021年に『私が見た未来 完全版』として再出版され、現在では100万部を超えるベストセラーになっている。だが、実際に同書を読めば、たつき氏の“予言”がオカルトの域を出ないことはすぐにわかる。予言の根拠はたつき氏がみた「予知夢」。たつき氏は「私は前世でサイババの娘だった」とも記している。

 この“都市伝説”は、1980年代に流行した「ノストラダムスの大予言」のように、一部のバラエティ番組や雑誌などで断続的に取り上げられてきたが、話が一気に広まったのは4月下旬頃。香港でこの噂を信じる人が多く、実際に日本便が減便されたと報じられて以降のことだった。

 Aさんもそのニュースで「7月5日」の話を知ったわけだが、不思議だったのは息子に「先を越されたこと」だった。家に帰り、息子に「どこでその話を聞いたのか」と尋ねると、「学校だよ。1年くらい前からみんな話してた」との答えが返ってきた。

 都内在住の自営業Bさんも、香港の騒動を報じるニュースで5月下旬にこの流言を初めて知った一人だ。やはり小学6年生の息子に先を越されていた。

「6月中旬、久しぶりに家族で外食に出かけたんです。息子を驚かせようと思って『7月5日の話、知ってる?』と振ってみたら、『怖いよー』って。もう知ってたんですよ」(Bさん)

 その時点で、Bさんはすぐにピンと来たという。

「息子の情報源は、ひとつしか考えられません。YouTubeです。朝から晩まで宿題もせずにずっと見てますから。実際、問い詰めると『そうだよ』って。驚いたのは、『3年前から知ってた』っていうんです」(Bさん)

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