「唐揚げポツン」給食が話題に… そういえば「米を食べるとバカになる」説がはやった時代もあった(中川淳一郎)
福岡市の学校給食が貧相だという記事が朝日新聞デジタルに出ました。SNS上での話題を紹介した形で、メニューは麦飯、鶏の唐揚げ一つ、春キャベツのみそ汁に牛乳。皿の中央にポツンと置かれた唐揚げの写真が哀れを誘います。
【実際の写真】“唐揚げ”がポツンとひとつだけ… 子どもが心配になる福岡市の給食
市教委は、唐揚げは2個分にあたる大きさだ、カロリーは十分だと説明しますが、せめてヒジキの煮物やキンピラゴボウくらい付けてあげても、と思います。
コロナ流行の頃、「濃厚接触」扱いになるギリギリ、つまり“マスクを外して15分以内”で完食可能となることを考えた「簡易給食」が登場しました。例えば熊本県天草市の小学校。そのメニューがスゴい。コッペパン、イチゴジャム、牛乳、ぶどうゼリーです。
私の時代は揚げパンの日を楽しみにする子が多く、個人的には炒めビーフンが一番好きでした。ともあれ、自宅で食べたことのないようなメニューが供され、食の幅広さを教えてもらったものです。パエリア、ポークビーンズ、けんちん汁、筑前煮なんて家では出てきませんでしたので。
字面に驚いたのがメルルーサのフライです。南米産の白身魚のフライで、けっこうウマい。弁当チェーンの白身魚フライにはメルルーサが使われることが多いと知り、海外の魚に興味を抱くきっかけも、思えば給食がつくってくれました。
好き嫌いは特になかったので給食といえば良い思い出だらけでも、嫌いなものが多い生徒はかわいそうでした。何しろ給食を完食しないと先生が怒るため、そういう子は少しずつかみ、牛乳でどうにか流し込む。
とりわけ気の毒だったのは、掃除の時間になってもまだ給食を食べさせられている生徒がいたことです。
掃除のため教室の後方に一斉移動させた机と椅子。その中で黙々とひたすら食べ続ける。掃除担当がホウキで床を掃くもので埃がバンバン飛散し、給食にも当然入ってしまう。
教室前方の掃除が終わると今度は机と椅子をすべて前方に移す。その時も、移動して引き続き昼食を取る姿が……。
1980年から84年まで通った川崎市立の小学校は米飯給食がなく、84年から86年まで通った立川市立の小学校は米飯が週1回だけ。当時、「米を食べるとバカになる」みたいな風説があったのも影響しているのか。
目下、「令和の米騒動」が社会を見舞い、人々は米を求めて行列を作りますが、米をさんざんいじめた歴史も思い起こしましょう。
あと、米飯に牛乳合わせるのって無茶苦茶過ぎでは。両者が本当に合うのなら、カフェのランチセットや定食屋のドリンクで牛乳が選択肢にあってもおかしくないはず。なのに基本的には烏龍茶、紅茶、コーヒーで、これぞ牛乳が米飯に合わないことの証左です。牛乳はカルシウムが多いから背が伸びるという説明を先生はしますが、結局、背の低い生徒はいます。
牛乳も値上がりし、かつて1000ミリリットル入りだったパックが900ミリリットルになっていたり。だったらいっそコスト削減のため、ヤカンの麦茶にしてはいかがでしょうか。浮いた分、少しでもおかずを加えられるかもしれません。ただ、積極的な牛乳摂取を勧める文科省の「学校給食実施基準」を変える必要がありますね。