「インディアンス」は大丈夫なのか 「改名」で売れる芸人・売れない芸人の違いとは

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「名」よりも「実」

 また、元アニマル梯団のおさるとコアラも占術師の細木数子の特番で彼女からアドバイスを受け、おさるは「モンキッキー」に、コアラは「ハッピハッピー。」に改名した。同じく細木の勧めでX-GUNはコンビ名を「丁半コロコロ」に改めた。占いの専門家である細木による改名はいかにも効果がありそうだが、実際には彼らの状況はさほど好転しなかった。

 芸人が芸名を変えてもあまり効果が見られなかった場合には、新しい芸名が世間に浸透する前に元に戻してしまうこともある。たとえば、ライセンスは番組の企画で「ザ・ちゃらんぽらん」に改名したが、のちに元に戻した。千鳥のノブは「ロンドンハーツ」(テレビ朝日系)の企画で元ビーチバレー選手の浅尾美和に「小池さん」と名前を間違えて呼ばれたことから「ノブ小池」に改名していたが、その後に「ノブ」に戻った。

 芸人が番組の企画やその場のノリで気軽に改名をするのは、芸名に強いこだわりを持っているような人が少ないからだ。お笑い界では、どちらかと言うと名前はそれほど重要なものではなく、面白ければ評価はあとからついてくる、と思われているところがある。

 結局のところ、芸名とは芸人の活動においてそこまで本質的なものではない。だからこそ、改名が良いのか悪いのかは一概には言えないところがある。その芸人に本質的な魅力や実力があれば、改名はそれを見せるためのきっかけになることがある。しかし、それがないまま名前だけを変えても、特に状況が変わるわけではない。さまぁ~ずやくりぃむしちゅーも、改名したから売れたわけではなく、もともと実力を持っていた人たちが、たまたま改名した時期に世に出たというだけだ。

 ちょんまげラーメンの改名が成功だったと言えるかどうかは、結局のところ、今後の彼らの仕事ぶりにかかっている。どんな名前であれ、結果を出してしまえば「それが良い名前だった」ということになる。お笑い界は「名」よりも「実」を取る実力社会なのだ。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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