親切な飲み会の幹事にこそ伝えたい…「ビールが好き」と「クラフトビールが好き」は結構大きな違いだという真実

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大雑把に「ビールが好き」ではだめ

 しかも、250mlで980円といったデラックス価格のため、おいそれと飲みまくるわけにはいかず、帰りにコンビニでいつもの安いビールを買い、満足できなかった気持ちを満たすことになる。だが、相手は親切心からその店を選んでくれただけで、自分が好きなものを聞かれた時の答え方が悪いのがいけないのだ。

 大雑把に「ビール」と言ったらダメなのだ。予約してくれる人は、「できるだけひねったビールでしかも少し高い店がいい」という感覚を抱くもの。クラフトビールとベルギービールはまさにそれに該当するわけだから予約にはうってつけである。

 しかし、もてなしてもらう側は「いや、そういうのではないんです……」という気持ちになってしまう。これに気付いた後のこの10年ほど、「何が好きですか?」と聞かれたら、「生ビールがスーパードライか黒ラベルの店、或いはサッポロ・キリン・アサヒの瓶ビールがある店がいいです! つまみは普通の居酒屋メニューで凝った料理はいりません」と言うようにしている。

「本当にそれでいいんですか? クラフトビールの店知ってますよ」と訝し気な顔をされるが、「本当に私はその手のビールと食べ物が好きなので、そちらがいいです。田中さんがクラフトビールをすごく飲みたいならばぜひそちらに行きましょう!」と答える。

 また、これについては「魚が好き」と言った場合も同様のことが発生する。その人はフライや塩焼きが好きなのだが、店を予約する側は「魚が好き=刺身が好き」と捉えるものである。人は誰しも相手に喜んでもらいたいと考えるから、最良の選択をしようと思うのだが、意思疎通は決して簡単なものではない。だったらキチンと「私はアジフライが本当に大好きで、アレがあればビールをいくらでも飲めますので、アジフライやフィッシュ&チップスのある店に行きたいですね」ぐらい言った方がいい。

 それと厄介なのが、チーズを含めた乳製品が食べられない、と言う人がいる場合。アレルギーというわけではないものの、味とニオイが苦手なのだという。そこで極力乳製品がなさそうな和風居酒屋を選ぶも、ピザがある。それを頼む人がいたので「スイマセンね、食べられませんよね」と聞いたら「いや、ピザのチーズは大丈夫なんですよ」と言い、パクパクと食べている。人の飲食の好み・不得手なものというものはかくも複雑なのだ。

 キュウリが苦手だという人も時にいる。その人は徹底しており、刺身盛り合わせに飾り切りをしたキュウリが各所に置かれていたら「キュウリのニオイが移ってるから食べられない」と刺身には手をつけなくなるのだ。

 というわけで、皆が幸せな時間を過ごすには、食べ物の好き嫌いは明確に幹事に伝えておいた方がいい。幹事は親切でその役を買って出てくれているのだから、その程度のことは伝えるべきだ。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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