トランプ氏の武力行使は“弱い相手”にだけ…「世界の警察」米国は今や昔という“不都合な真実” イラン攻撃も「功績狙い」

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トランプ氏が考えを変えた理由

 米軍は6月22日、イランの核施設を攻撃した。米国のイラン領内への攻撃は史上初だ。トランプ大統領はこれまで回避すると公言してきた対外紛争への介入に踏み切った。

 5月に中東を訪問した際のトランプ氏は、まったく別の考えを示していた。過去の米政権による軍事介入を批判し、海外で無駄な犠牲を払い、米国民をないがしろにしてきたと主張した。だが、舌の根が乾かないうちにその方針を大転換した形だ。

 トランプ氏の今回の決断には、イスラエルの軍事作戦の成功が関係しているという。イスラエルが13日にイランに単独で攻撃を仕掛け、イラン軍幹部の暗殺や核施設の破壊を成功する様子を見て、トランプ氏が考えを変えたというのが定説だ。

 ニューヨークタイムズによれば、イスラエルの軍事作戦でイランが大打撃を受けたことを知ったトランプ氏が、自らもここで功績を挙げたいと考えるようになったという。

 1979年に起きた在イラン米大使館占拠事件は、今も米国人にとってトラウマだ。亡命した国王の引き渡しを求めて大使館に侵入したイランの学生らにより、外交官ら50人以上が400日以上にわたって人質になったことは米外交上の最大の汚点の1つだ。

 その屈辱を晴らし、イランの核開発阻止という長年の悲願を達成できる絶好のチャンスが到来したと判断し、トランプ氏は軍事侵攻を決断したというわけだ。

イスラエルの猛攻で反撃できない“弱い相手”に

 トランプ氏の行動を予測するのは難しいが、関税政策などを巡る朝令暮改ぶりを揶揄する「TACO」(トランプはいつもビビって退くという意味)という造語が、彼の安全保障政策を分析する際にも参考になるとの指摘がある(6月6日付日本経済新聞)。

 トランプ氏は武力行使をちらつかせ、過激な脅しを楽しむ傾向にあるが、それを実行するのは極めてまれだ。

 欧州外交問題評議会のリサーチ・ディレクターであるジェレミー・シャピロ氏は、「トランプ氏は1期目と2期目で武力を行使するという脅しを22回かけたが、実行に移したのは2回のみだった」と指摘する。詳細を見てみると、トランプ氏は戦いが対等になる可能性がある状況では武力行使を回避するが、反撃される可能性がまったくない弱い相手に対しては武力を行使していることがわかる。

 シャピロ氏の主張に従えば、イランはつい最近まで手強い相手だったが、イスラエルの猛攻で反撃できない弱い相手になったと判断されたため、米国から攻撃を仕掛けられたことになる。

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