「美空ひばり」死去で米国工場まで稼働させたレコード会社、葬儀中継は“争奪戦”…ファンも「金に糸目はつけない」大フィーバーの裏側
アメリカの工場でも作って逆輸入
増産体制に入ったメーカーとは、ひばりさんがデビュー時から所属していた日本コロムビア。同社の宣伝グルーブ主幹・大槻孝造氏(当時)は、フィーバーからくる好景気にもろ手を挙げて喜べない複雑な心情を吐露していた。
〈「正直いって、私どもとしては複雑な気持ちなんですよ。美空ひばりのコロムビア、コロムビアの美空ひばり、と言われるくらいで、当社としてはひばりさん亡き後どうするかという問題もありますからね。社員の中には、“ひばりさんがいるからコロムビアに入った”という者も結構いますしねえ。売れた売れたと喜ぶことはできないんです」〉
とはいえ、売れたことは事実。
〈「その日(6月24日)のうちに全国のレコード店からうちのほうへ仕入れの注文が殺到し、なんと20億円の注文がありました。その後も、ひっきりなしに注文がきて、国内の川崎と白河の2工場では生産が間に合わないので、アメリカのアトランタの工場でも作って逆輸入することにしたんです。こんなことは、後にも先にも経験がありませんよ」〉
1週間で6億円を売り上げ、在庫はほぼ完売。取材の時点で、61種の計130万枚を増産中だった。〈60億円を軽く超え、ことによると100億円に達するかもしれない、と予測する人もいるほどなのである。〉と「週刊新潮」は続けている。
葬儀中継が「TBS独占」になった理由
音楽業界の次は〈レコード会社以上にハッスルしている〉テレビ業界。
〈さる事情通に言わせれば、それはこんな具合。「テレビ局は各局競ってひばり特集をやっていますが、そのひばりフィーバーが最高潮に達するのが、7月22日のひばりの本葬の実況中継。青山斎場で2時間以上にわたって行われる本葬の様子をまるまる中継すれば、その番組のスポンサーから5、6億円の広告料が入ると言われているんです。TBSが独占中継するという情報も流れましたが、葬儀を興行にしちゃっていいのか、という意見もあってまだ決まったわけじゃない。他局も巻き返し交渉中なんです」〉
ただし、この“巻き返し交渉”は実らず、TBS独占となった。当時コロムビア制作部だった境弘邦氏は後年、独占の理由は「衛星放送」にあったと明かしている(演歌・歌謡曲情報サイト「うたびと」連載「境弘邦 あの日あの頃~昼行灯の恥っ書き~」より)。生前のひばりさんは普及し始めていた衛星放送に注目し、体調が戻れば「衛星放送で楽しいイベントをやりたい」と話していたという。
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