あだ名は「ハンサム・ボーイ」警視庁ナンバー2は急な代役 「大川原・冤罪事件」公開謝罪で問われる反省の真剣さ
足利事件での謝罪
関係者によると、鎌田副総監は自分が公安部長の代わりに謝罪することが決まってから、担当者などからレクチャーを受け、当日のシミュレーションも実施していたという。当日はカメラの前でメモをほぼ見ることなく神妙な表情で頭を下げていた。その時は無事に乗り切ったと思ったかもしれないが……。
警察による冤罪事件に対する謝罪といえば、栃木県足利市で女児が殺害された足利事件が思い出される。無期懲役が確定し服役中だった菅家利和さんは2009年、再審請求審によって冤罪の可能性が高まり釈放された。当時の栃木県警の石川正一郎本部長(後に公安部長などを歴任)は、「長い間つらい思いをさせましたことを、心からおわび申し上げます」と、当時としては異例のテレビカメラを入れた場で頭を下げて謝罪し、警察内部では「うまく対応し、世論を鎮静化させた」と一定の評価がなされた。
足利事件での謝罪対応は、「公安畑が長く世論を見ることにたけていた石川氏が、心がこもっているかは別にして何度も予行演習をしてほぼ完璧に乗り切った」などと関係者から評価されたわけだが、今回は前例踏襲とは行かず、結果として大失敗に終わってしまった。
東京地検の森公安部長も
亡くなった相嶋さんの遺族は「何が真実だったのかが、まったく明らかになっていない」として謝罪を受け入れず、この日も同席を拒否。また、そもそも逮捕から5年も経ってからの幹部による謝罪はあまりに対応が遅すぎるという声も強い。
警察庁の有力OBからは「緊張感が足りないというレベルではない。公の場で警察を代表して謝罪するという重みを、根本的に理解していないのではないか。もはや警察官僚の質の問題でもある」との声も聞こえるが、それに尽きるだろう。
ちなみに同席した東京地検の森公安部長も、謝罪の際に「大川原化工機」を「大川原化工機工業」と言い間違えたうえ、亡くなった相嶋さんの名前がすぐに出てこず、しばらく言い淀んでメモを見返すなどの不手際が見られた。
大川原社長や名前を間違えられた島田さんなど会社側は、この日のミスについては比較的寛容に受け止めているというが、「冤罪事件について第3者を入れたうえで客観的かつ徹底的に検証し、本質的な防止策を打ち出すべきだ」と強く主張している。
捜査当局の自爆ともいえる今回の大きな失態。地に堕ちた信頼を回復できるかは今後の具体的な取り組みにかかっているといえよう。
[3/3ページ]

