【べらぼう】福原遥「誰袖」こそ花魁の鏡 “海苔”“豆腐”も使って客をだます「吉原」の手練手管

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客をその気にさせる手練手管

 第23回「我こそは江戸一利者なり」(6月15日放送)には、誰袖のしたたかさが全開となる場面があった。客は松前藩主、松前道廣(えなりかずき)の弟で家老の松前廣年(ひょうろく)である。

 誰袖は問うた。「主さん、琥珀というのはなにゆえかように高いのでありんすか?」。廣年が「そりゃあ、商人が利を乗せるからでな」というと、「では、商人を通さず、直にオロシャ(ロシア)から主さんがお買いつけになることはできないのでありんすか? そうすれば安く手に入りんしょ?」と誰袖。廣年は思い詰めた挙句、「ならぬ! ならぬ!」と激しく拒み、続けた。「それでは抜荷となってしまう! 異国と勝手に取引をすれば、ご法度! 下手をすれば取り潰しじゃ!」。

 だが、誰袖はひるまない。笑顔を浮かべたまま、「けんど、主さんが安く手に入れ、親父様に高値で買い取らせれば、相当な金がお手元に残りんしょ?」という。廣年がさらに激して、「差し出口を利くな! 女郎ごときが!」と、誰袖を激しく怒鳴りつけると、彼女は悲しみを浮かべて目に涙を滲ませる。

 すると、廣年はたちまち弱気になり、「花魁、花魁」を呼びかけるので、ここで誰袖は決め台詞を吐いた。「わっちは、その金があれば、主さんともっとお会いできるかと思いんして…」。そういって涙を流すと、廣年は「これ、泣くでない。分かった、ひとつ考えてみるゆえ」という。誰袖は「嬉しゅうありんす!」といって廣年に抱きつき、「主さん、ぜひいつの日か、身請けを」といいながら、抱き合っているがゆえに廣年からは見えないその顔に、不敵な笑みを浮かべるのだった。

 要は、客をだましてロシアから琥珀を直接買わせ、幕府の禁制に触れさせようというわけで、この嫌らしさ、したたかさは、五代目瀬川にはなかった。そして、どちらが花魁らしいかといえば、誰袖のしたたかさのほうだろう。

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