ついに逮捕の「詐欺インプラント歯科」院長 「健康な歯まで抜かれて…」被害者が明かす悪質すぎるその手口
「アイツの歯を全部抜いてやりたい」
院長を務めていた歯科医医院で、患者から200万円を騙し取った元院長の男が逮捕された。被害総額は1億円超とされている。「週刊新潮」では、昨年から被害者たちを取材。悪質すぎるその手口とは……。【前後編の前編】(以下は「週刊新潮」2024年8月1日号掲載の内容です)
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【写真を見る】「口の中が悲惨な状態に…」 インプラント詐欺にあった被害男性
「アイツの歯を全部抜いてやりたい」
憤まんやるかたない様子でこう語るのは、千葉県で建設会社を営む男性(50代)だ。“アイツ”とは、千葉市内に歯科医院を構える「高橋デンタルオフィス(以下、TDO)」の院長、高橋仁一氏(57)のことを指す。
1996年に東京歯科大学を卒業した高橋氏は、2002年にTDOを開業。HPでは「日本顎咬合学会」の認定医を謳い、〈不安な将来、快適な未来、決して後悔のないご選択を〉と宣伝文句を掲げている。
高額なジルコニア製を勧められ…
冒頭の男性はもともと歯周病が進行して上の歯が3本抜け落ち、インプラント治療を検討していた。知人の紹介を受け、TDOの門をくぐったのは22年6月のこと。
「(歯が抜け落ちた)3カ所を治せばいいかな」
そう思っていた男性に対して、初診時に高橋氏はこう言い放った。
「どうせやるなら、全部治さなきゃしょうがない。上を治したら、すぐ下の歯もダメになるから」
この時男性は、人工歯根の素材に関して一般的なチタン製ではなく、“人工ダイヤモンド”と呼ばれる高額なジルコニア製を勧められたという。
「“チタンは発がん性があるけど、ジルコニアだったら安全だから”と言われました。一生使うものですので、安全で良い物があるなら、高くても思い切ってそちらにしてもらった方がいいかな、と」
700万円支払ったのに1回しか手術が行われず
男性が次に赴くと、「インプラント治療計画書兼見積書」なる書類が準備されており、全ての歯を抜いて合計16本の人工歯根を埋め込み、オールセラミックスのかぶせ物10個を付ける内容の見積もりが書かれていた。合計5回の手術を要する、総額700万円の壮大な治療計画だった。
「予想以上に高額なので私が悩んでいると、“来月になったら800万円になりますよ”と言われました。聞くと、材料費が上がっているのだとか。100万円も上がる前にと、その場で契約書にサインし、自分の会社から借りる形でお金を工面して、6月中に700万円を支払いました」(同)
しかしながら、実際に手術が行われたのは一度きり。しかも、その手術の少し前に男性は不可解な話を持ちかけられている。
「学会で発表する資料用に、症例を使わせてもらいたい。もう700万円を追加で出してくれたら、治療完了時に1400万円全額返すキャンペーンなんです」
若干心が揺らぐも、すでに男性の手元に資金は残っていなかった。話を詳しく聞く前に断ったのだが、高橋氏は「500万円ならどうですか?」と、しつこく食い下がったという。
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