「小さい頃から性に興味がない」50歳夫 レスすぎる夫婦生活に妻が「外注」を宣言するまで
妻から誘われても…
さらに出産にも立ち会ったため、「凄絶な苦しみの中から命を生み出す瞬間」に衝撃を受けた。これほど崇高で、なおかつこれほど動物的なことがあるのだろうかと数日間は食べ物も喉を通らないほどだった。
「産まれた子は天使のようにかわいくて、もういっそ会社を辞めて子育てに専念しようかと迷ったほどです。愛おしいという言葉をあんなに噛みしめたことはなかった」
生後半年ほどたったころ、妻から「ねえ」と誘いを受けたが、彼はその気にはなれなかった。「自分のアレを妻の体に入れるなんて、とてもじゃないけどできない。なんだかそうやって卑下する気持ちが止められなかった」そうだ。たまにこういう男性は存在する。そうやってセックスレスになってもいくのだが、彼はもともと性的欲求をほとんど自覚したことがないから、性的なことと離れていたほうが心が落ち着いた。だが妻としてはそうはいかない。
「もう私のことが嫌いなのかと聞かれたりもしました。そうじゃない、僕の問題だと思う。でも何が問題なのかよくわからない。僕はきみと娘を世界で一番愛している、それだけは本当なんだと繰り返し言った。だったらしようよと美緒は言う。好きだからこそできない、大事だからこそ手を出せない。その気持ちはわかってもらえなかったんでしょうね」
「外注する。家庭には迷惑をかけない」
娘を保育園に預けての共働きだったが、浩毅さんは自ら「自分がなるべく定時で帰る」と決めた。妻は海外駐在を求められるような「デキる女」なのだから、自分が家事育児はメインでやるつもりだった。
「妻も娘とはどっぷり関わりたいと思っていたようで、結局、ふたりとも極力、定時で帰って家族の時間が増えていった。娘を真ん中にして妻との関係も深く強くなっていくと僕は信じていたんですけどね……」
ある日、美緒さんは彼の目を見てはっきりと言った。
「私はあなたが好きだし大事だと思っているけど、自分の欲求も大事にしたいの。私はセックスしたい。だから外注する。家庭には迷惑をかけない。それでいい?」
この言葉に浩毅さんは「感動した」という。言いにくいことをこんなにはっきり言うのはすごい。それによって彼は少しだけ肩の荷が下りたような気になった。
***
思わぬ形で決着を見せたかに見えた、浩毅さん夫婦のレス問題……。【記事後編】で紹介するのは、彼が「つらい思いをしている」と語る今日に至るまでの、やや意外な展開である。
[3/3ページ]