「性欲処理も命懸け」「2日目のカレーは要注意」 5000体以上の遺体を解剖した法医学者が明かす「高齢者の死の落とし穴」
2日目のカレーに要注意
食事に関する話でいえば、高齢者にとっては食中毒も死に至る危険性があるので要注意です。
「2日目のカレー」は、一晩寝かせることで味の深みが増すといわれます。鍋で作ったカレーを冷蔵庫にしまい、翌日、そのまま鍋を火にかけ、温めてからおいしくいただく。実は、この食べ方が危ないのです。「加熱=消毒=安全」と思われている人もいるようですが、食中毒をもたらすウェルシュ菌は、火にかけても死にません。しかも、空気がないところで繁殖するので、冷蔵庫に入れている間に菌の脅威は増します。「2日目のカレーで食中毒」には気を付けなければならないゆえんです。
対策としては、再調理する際にしっかりと鍋の中をかき混ぜて空気を入れてあげることです。胴の深い鍋だと、底のほうはかき混ぜ切れなかったりするので、鍋であれば胴の浅いものを使う。また、底が深くないタッパーなどに小分けにして冷蔵庫や冷凍庫で保存することがお勧めです。できれば作り置きはせず、1回で食べ切る方がより安全であるのは言うまでもありません。
女性の腹上死も
さらに、下世話な話になりますが、「性欲を満たそうとして亡くなる」リスクにも高齢者は気を配る必要があります。
腹上死の75%は不倫関係によるものという報告もあるのですが、法医学者としてご遺体の解剖をしてきた経験上、腹上死は、高齢者が年の離れた若い相手と性交渉を持ったケースに多い印象があります。
いずれにしても、性交渉はとりわけ高齢者にとって「命懸け」の行為と言っても過言ではありません。それなりの「覚悟」を持って事に当たる必要があるでしょう。
男性の場合、勃起して射精に至るわけですが、この一連の流れは、自律神経の副交感神経から交感神経へのスイッチの切り替わりが激しく行われるため、全身に負担がかかります。その結果、心筋梗塞や脳内出血が引き起こされる危険があるのです。ということは、自慰行為にもリスクがあることになります。実際、テレビからアダルトビデオの映像が流れ、下半身を露出したままのご遺体に接したことがあります。
ちなみに、射精を伴わない女性も、性交渉や自慰行為によって、血圧が一気に上がり、やはり死に至るケースが存在します。
ここまで見てきたような、高齢者の身の回りに潜む「死の落とし穴」を知り、対策を取る。それは取りも直さず、思わぬ死を未然に防ぐ予防医学でもあります。運動法や食事術などに気を配るのと同じく、突然死の「ケーススタディー」を理解しておくことは、本当の意味での老衰で天寿を全うするための「実践的健康法」の一つといえるのではないでしょうか。
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