親日・料理上手・最新作「メガロポリス」の酷評にも平然…字幕翻訳家「戸田奈津子」が語る「天才コッポラ監督」の“頭の中”

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コッポラ監督は特別な、天才的アーティスト

 ――様々な監督を見てきた戸田さんが思う、コッポラ監督の特別なところとは?

 一般的な「映画のルール」にのっとっていないところ。例えばビリー・ワイルダーのような監督は、「人を楽しませる」という目的で、台本からセオリー通りに、非の打ち所のない娯楽映画を作る。職人技です。でもフランシスは、娯楽はあまり意識してないけど、自分の言いたいことを言う。本当に特別な、天才的アーティストだと思います。

 ――「メガロポリス」では、今のアメリカの姿をそのまま描いているようにも思えました。

 トランプ政権の現状を描き、狂信者が「Make Roma Great Again」と書いたプラカードを掲げる場面もあります。コッポラ監督だけでなく、私自身も「人間は古代から全然変わらない、何も学ばない」ということは思いますね。これだけ戦争を繰り返しても、まだ戦争をやろうとしているわけですから。

既成概念にとらわれず、未来を探索していくべき

 ――配信の躍進と映画離れが進む今の時代について、映画は生き残っていけると思いますか?

 はっきり言って、昔のパワーはないですよね。そこにはCGなどのデジタル技術の登場が関係していると思います。フィルムメーカーたちが「新しく手にしたおもちゃ」で遊びすぎ、そればかりが先行してしまったからじゃないかと。

 ここ数年はオスカーも「本当にこれが作品賞?」と思わせるものばかりでがっかりしていました。今年のオスカーは少し揺り戻した気がしますが、やっぱりかつてのような内容重視の映画に戻していく、そうすれば観客も戻ると思うんですけどね。劇場で他の観客と一緒に見るという環境は変わっていくかもしれませんが。

 ――そういう時代に、コッポラ監督がこういう作品を作ったことの意味は?

 この作品について、コッポラ監督は「IMAX」でないと――つまり通常とは違う大画面と音響でないと上映させないと言っています。そういうこだわりがあるから劇場上映が成立するし、今はそれが可能だからやっているわけです。でももしそれができなくなれば彼はまた別の面白い方法を考えて、映画を成立させると思いますね。

 映画は誕生からたった100年の間にどんどん形を変えてきたわけだし、今の形にこだわる人はそれが限界だと思っているのかもしれません。コッポラ監督のように既成概念にとらわれず、未来を探索していくことが必要ですよね。

〈フランシス・フォード・コッポラ監督最新作「メガロポリス」2025年6月20日(金)全国公開 配給:ハーク、松竹〉

渥美志保(あつみ・しほ)
TVドラマ脚本家を経てライターへ。女性誌、男性誌、週刊誌、カルチャー誌など一般誌、企業広報誌などで、映画を中心にカルチャー全般のインタビュー、ライティングを手がける。yahoo! オーサー、mimolle、ELLEデジタル、Gingerなど連載多数。釜山映画祭を20年にわたり現地取材するなど韓国映画、韓国ドラマなどについての寄稿、インタビュー取材なども多数。著書『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』が発売中。

デイリー新潮編集部

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