もう滅茶苦茶…「海外作品に100%の関税」のトランプ発言にハリウッド大混乱 3人の有名俳優を突然“特別大使”に任命も

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「Runaway Production」で最も苦しんでいるのは……

 最近、カリフォルニア州とニューヨーク州は、撮影のための税金優遇措置を拡大すると発表したが、同じことをアメリカ全体のレベルでやってくれれば、あるいは関係者の状況は大きく変わるのかもしれない。

 しかし、アメリカが国として映画やテレビの製作を手助けするということは、現実的なのだろうか。今の状況を見るかぎり、残念ながら、あまり希望は持てないと言わざるをえない。

 まず、トランプは、この問題にほとんど関心を持っていない。自国ファーストの彼にとって、「撮影」という大きなビジネスが海外に流れていることは面白くないにしても、自分を敵視するカリフォルニア州や、ロサンゼルスの人たちを助けることは決して優先事項ではないのだ。

 それに、カリフォルニア州の外に住む一般人たちからの支持も、あまり期待できそうにない。

 2023年の俳優と脚本家のダブルストライキと、今年初めのロサンゼルスの山火事は、映画やテレビドラマは有名なスターや監督だけでなく、小道具係や大道具係、衣装やアシスタント、運転手など、多くの人たちがかかわることによって完成するのだという事実を、あらためて人々に認識させた。実は、「Runaway Production」で最も苦しんでいるのも、こうした人々なのである。

 とは言っても、多くの人はまだ、ハリウッドの住人に対し「特権階級」のイメージを持っている。とりわけ、今はトランプの関税のせいで多くの業界がダメージを受けているのに、ハリウッドだけに税金優遇制度を与えると言ったら、別の業界の人たちは納得がいかないだろう。

トランプと敵対する民主党ニューサム州知事が掲げる優遇措置

 ハリウッドの関係者は、映画産業の窮状を合衆国全体で考えてもらえるチャンスだと考えたが、それも束の間、その希望はあっさり立ち消えそうな感じである。

 さらには、次期大統領選への出馬を狙っているとされる、民主党のギャヴィン・ニューサム州知事が約束する、カリフォルニアでの税金優遇措置の引き上げにも、不安がちらつきはじめた。2025年から2026年度にかけての新年度の予算が、大幅に赤字であることが判明したのだ。

 ニューサム州知事は、不法移民に提供する無料の健康保険を縮小するなどいくつかの削減案をもって対処するかまえだが、「これまでの倍の規模にする」と謳う新たな税金優遇措置は本当に実現できるのだろうか。

 ニューサム州知事は「この約束は守る」と宣言している。2028年の大統領選へ向けて、地元の支持を固めるためにも、連邦政府が放置してきたこの“お膝元”の問題に対し、何らかの成果を出したいという思惑があるのだ。

 もっとも、この数日はロサンゼルスでのデモに対するトランプの強行的な措置のせいで、ニューサム州知事も完全に振り回され、それどころではなくなっている。ハリウッドの関係者が救われる日は、果たしてやってくるのか。

猿渡由紀(さるわたり・ゆき)
神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

デイリー新潮編集部

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