「性的マイノリティーに関する研究費の支給が停止されたと聞いた」 ハーバード大の日本人研究者が明かす なぜトランプ大統領はハーバード大を目の敵にするのか

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【全2回(前編/後編)の前編】

 数々の名士を送り出してきた名門・ハーバード大学がトランプ大統領(78)の圧力の前に危機に立たされている。日本では政権側の横暴ぶりが盛んに報じられているが、実際に同校で勤務する邦人たちはどう見ているのか。過熱する「大学vs.トランプ」の実情を探る。

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「卒業生が世界中から集まりました。これがあるべき姿です」

 5月29日、ハーバード大学の卒業式でアラン・ガーバー学長(70)がこう述べると、大きな歓声と拍手が巻き起こった。メインキャンパス「ハーバードヤード」に集った9000人超の卒業生たちの手には、式場で配られた地球を模したボールが握られている。国際色豊かな様子を強いて押し出したのは、トランプ大統領による同校への“弾圧”が4月から続いているためだ。

補助金、契約の凍結を決めると、大学側は連邦地裁に提訴

「かねてよりリベラル色の濃い名門大学を目の敵にしてきたトランプ氏は、4月11日にハーバード大に対し書簡を送付しました。同校が教育プログラムや選考方針に反映させているDEI(性別や人種などの多様性を重視する理念)を廃止すること、学内の“反ユダヤ主義”への規制強化などが主な要求です。トランプ政権はパレスチナ問題でイスラエル支持を明確にしていますから、反戦デモなどを黙認している大学に不満がある」(外信記者)

 大学がこれを「自治侵害」だとして拒否すると、トランプ大統領も「まともな教育機関と見なされていない」と応酬、両者は正面から対立することになった。政権側が約22億ドル(3140億円)の補助金や契約の凍結を決めると、大学側はこれを違憲として連邦地裁に提訴するなど、争いは泥沼の様相を呈しているのだ。

“エリート嫌い”

 同校のさる日本人教員が、その内幕を明かす。

「白人労働者層を支持基盤とする共和党は昔から“エリート嫌い”の傾向があります。良家の子女も多いハーバード大が攻撃対象になることは、トランプ政権発足当初から予想されていました。4月3日にもDEI廃止や反ユダヤ主義の規制強化を求める書簡が届いているのですが“もっともな指摘には従って、政権とうまく付き合っていこう”と当初、職員会議では話されていました。実際DEIについては、マイノリティーの登用を考えなしに重んじるのはどうかと、学内でも疑問視されていたのです」

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