中3で父が失踪、2人で暮らす「血のつながらない母」が初恋だった 42歳男性の“歪んだ結婚観”

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良輔さんの“本心”

 彼は継母を解放したいと言ったが、実は継母にかなり強烈な恋心を抱いていたらしい。このまま同居していると「親子」の関係を超えてしまいそうな恐怖感があった。仮にも父親の妻だった女性と男女の関係になるのはあり得ないと考えるのだが、継母を見ると邪な想像がふくらんだ。それが現実になる怖さから、彼はあえて継母のもとを去った。

「中学生のころから継母が好きでした。スナックで働いて、ときどき男に送られて帰ってくる継母に憎悪を抱いたけど、それは憎悪ではなく嫉妬だった。それに気づいて、とにかく早く継母と離れようと思ったんです」

 実母への感情、継母への気持ちは、いずれも複雑なものだった。このあたりが彼の女性観に大きな影響を与えたのかもしれない。

「大学生になってひとりで暮らし始め、ようやく気持ちが落ち着きました。なんというか、子どものころからきちんと自分のことを考える時間がなかったような気がするんです。だからといって周りの人に思いを寄せていたわけでもない。いびつな心というか、無意識にあまり感情を覚えないようにしようとしてきたのかもしれない」

初めての恋人

 大学生になってやっと友だちと交流したり、アルバイト先にも友人ができたりと、「普通の生活」を楽しむ余裕ができた。そんな中で、ガールフレンドもできた。

「大学2年のときでした。同じ専攻の女友だちに好きだと告白されたんです。どう答えたらいいかわからなかった。誘われるままにデートをしたけど、ごく一般的な世間話しかできない。彼女が退屈しているのがわかって焦りました。嫌われたくなかった。結局、3ヶ月もたたずにフラれたんですが、僕にとってはいったい何だったんだろうという感じ。それでも友人たちの間では、僕がフラれたことがおもしろおかしく広まった。僕自身は淡々としているように見えたらしいですが、淡々としていたわけではなくてどうしたらいいかわからなかっただけ」

 ただ、その“恋”は彼にとっていい経験となったようだ。周囲との関係なども少しずつ築いている実感が出てきた。恋も知らないイケてないヤツというレッテルは貼られたが、淡々としていたことで、意外と図太いヤツと評価もされた。いつの時代も、人は勝手にレッテル貼りをして勝手な想像で盛り上がるものだ。そのくせ、実は他人のことなど気にしてはいないのが実情。そういうことを良輔さんは学んだ。

「自分らしく生きる、みたいなこともよくわかりませんでしたね。ただ、僕は成績を落とすわけにはいかないので、とにかく一生懸命、勉強はしました。そのおかげか在学中に、ある国家資格にも合格しました」

 就職もスムーズだった。初めて給料をもらった日、継母に食事をごちそうした。父や自分にかかわったことで、いちばん被害を受けたのは継母かもしれないと思うようになっていた。

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