大学で「足し算」「かけ算」を教える意味はあるのか? 実際に教えた数学者が「ある」と胸を張るワケ

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1位→38位転落の日本

 以上、簡単にだが「数の基礎理解」の内容を紹介した。

 大学には文系分野を専攻する目的で入学したものの、「数の基礎理解」を履修したことがきっかけとなって、筆者の数学・数学教育ゼミナールに参加した学生が毎年数人いたことを懐かしく思い出す。その中から、教員採用試験に合格して立派な数学教員として活躍している者もいて、頭が下がる思いである。

 スイスのローザンヌに拠点を置くIMD(国際経営開発研究所)の「世界競争力年鑑」で、同年鑑の公表が開始された1989年から1992年まで日本は1位であったが、2024年は過去最低の38位になってしまった。これは深刻に捉えることであり、戦後の謙虚にひたむきに算数・数学を学んだ頃を振り返れば、学びの軸足は安易な「暗記」から丁寧な「理解」に移すことが鍵になると考える。

芳沢光雄(よしざわ・みつお)
1953年東京生まれ。東京理科大学理学部(理学研究科)教授を経て、桜美林大学リベラルアーツ学群教授に就任、2023年に定年退職。現在、桜美林大学名誉教授。理学博士。専門は数学・数学教育。近著に『いかにして解法を思いつくのか「高校数学」(上・下)』『昔は解けたのに……大人のための算数力講義』(ともに講談社)ほか著書多数。

デイリー新潮編集部

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