終活をしてはダメ、家族だけで過ごさない… 認知症にならない人の「九つの習慣」
脳内は認知症状態でも発症しない人がいる。そう聞くと気持ちが楽になり、過度に加齢を恐れずに済むのではないか。そのためには「認知予備能」なるものについて知り、“認知症になりにくい人”を目指す必要がある。専門家が解説する、認知症を防ぐ「九つの習慣」。【長田 乾(ながたけん)/横浜総合病院・横浜市認知症疾患医療センター長】
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認知症を発症せずに亡くなった高齢者の脳内を調べたところ、そのうちの約30%はアミロイドβが蓄積していたことが研究によって明らかになっています。
アミロイドβは、全認知症の7割ほどを占めるアルツハイマー型認知症の原因物質とされるタンパク質です。つまり、脳の「状態」としては認知症になっていてもおかしくないのに、「現実」には認知症を発症しなかった人が3割程度いるのです。ということは、加齢に伴い脳内にアミロイドβがたまってしまったとしても、「3割」の中に入ることができれば生涯ボケずに済むわけです。
では一体、どうすれば「3割」の仲間入りを果たせるのでしょうか。その答えの一つは、「終活」をしないことだと私は考えています。これは、近年注目されている「認知予備能」から導き出された科学的な回答です。
〈人生100年時代の“嗜(たしな)み”ともされる終活に、認知症予防の観点から疑義を呈するのは、現在、横浜総合病院・横浜市認知症疾患医療センター(神奈川県)のセンター長を務め、長年、画像診断などをもとに認知症の臨床・研究を続けている、日本認知症学会認定専門医・指導医の長田乾氏だ。
目下、がんを抜き、なりたくない病気・症状の第1位になっている認知症。予防対策に励む中高年にとって「3割」の話は朗報に違いない。
長田氏が続ける。〉
「認知機能の低下に抗う力」を鍛える
アミロイドβの観点からは“認知症状態”なのに、実際は認知症になっていない――。この不思議な現象のポイントである認知予備能は、言ってみれば「認知機能の低下に抗(あらが)う力」です。英語では「cognitive reserve(認知の蓄え)」と呼ばれ、要は認知機能が低下してきても、それに抗する“余力”を脳内に蓄えているのが、先の「3割」の人たちと考えられるのです。
従って、認知症発症を避けるには認知予備能を鍛えればよいということになります。別の考え方をすれば、「3割」の人たちが脳内にどんな“余力”を蓄えているのかを分析し、それを見習うことで「認知症になりにくい人」を目指すことができるのです。
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