Vシネマ界の頂点を極めた「日本統一」が地上波ドラマに殴り込み…女性ファン急増のウラにかつての任侠作品と一線を画す“魅力”

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Vシネ四天王

 レンタルビデオが全盛期だった90年代、映像各社はオリジナルビデオの制作に力を入れ始めたが、中でもレンタル店を席巻していたのが、大手配給会社・東映が89年3月から制作・発売を開始した「Vシネマ(以下Vシネ)」シリーズだった。Vシネの特徴は、映画ほどの予算はないものの、レンタル店のユーザーを家庭で楽しませることが最大の目的で、初期の頃はアクション作品が多かった。

「Vシネ人気が高まるにつれ、故・萩原健一さん、仲村トオルさん(59)ら映画界で活躍する俳優陣も起用されるようになりましたが、圧倒的に男性主演作が多く、アクションと色っぽい場面は必要不可欠な要素でした。次に、昼は下着会社のデザイナー、夜はヤクザの組長という、香川照之さん(59)主演の『静かなるドン』が人気シリーズに。『日本統一』もそうですが、古くからVシネで圧倒的に人気のあるジャンルは、ヤクザが主人公の任侠作品でした」(映画業界関係者)

 やがて、Vシネの人気シリーズに出演する俳優たちを総称して「Vシネ四天王」と呼ぶようになる。その顔触れだが、代表作「難波金融伝・ミナミの帝王」シリーズで大阪・ミナミの高利貸し・萬田銀次郎役を演じた竹内力(61)。「借王(シャッキング)」で、資産家の大金を横領してクビが回らない、東大卒のエリート銀行員・安斎満役を演じた哀川翔(64)。数々のVシネ作品に出演し歌手としても活躍していた白竜(72)。そして、76年に「失恋レストラン」が大ヒットし歌手としてブレーク後、俳優に転身し「首領への道」シリーズで主演を務めた清水健太郎(72)だ。

「もともと、Vシネの最長シリーズは本編25作の『首領への道』でした。しかし、清水さんが薬物事件で何度も逮捕されるなどがあっため、企画自体が打ち切りに。後年、シリーズ最長記録をあっさりと『日本統一』に抜かれてしまいました」(同前)

 そして「ネオVシネ四天王」と呼ばれているのが、「日本統一」にW主演する本宮と山口、同シリーズのほかに数々のVシネ作品に主演・出演している中野英雄(60)と的場浩司(56)だ。本宮と山口が「四天王」と呼ばれるようになったのは、「日本統一」がヒットしてからだったが、当初はここまでのヒットを予想する声はなかったという。

「キャストは本宮さん、山口さん、Vシネ界のスター・小沢仁志さん(62)ら、シリーズの主要キャストたちに加え、白竜さん、故・千葉真一さん、故・梅宮辰夫さん、故・津川雅彦さんと、かなり男くさい作品でかつての東映のヤクザ映画に近い雰囲気でした。ターゲットは明らかに、古くからのVシネファンの男性。その雰囲気のままシリーズが進んでいたのですが、『首領への道』の記録を超えたあたりの頃は、すでに売り上げも配信ビジネスも失速気味。30作を超えてもなかなか人気が伸び悩み、関係者は“幕引き”を考えていたそうなのですが……」(先のVシネマ業界関係者)

 年に本編新作が5本、ほぼ2カ月に1回というハイペースでリリースされていた20年1月25日の「日本統一37」リリース後、とんでもない“追い風”が吹くのである。

「コロナ禍でステイホームが叫ばれ、以前に比べ動画配信サービスの利用者が激増。その中で、U-NEXTを中心に配信されている『日本統一』の視聴者も爆発的に増えたのです。私の友人は1作目から30作目までのダイジェストを視聴後、本編を見て大ハマリ。今では、スピンオフや劇場作品も観劇するぐらいのマニアです」(同前)

 もともと、Vシネ作品でスポットが当たるのは、圧倒的に主人公だったが、「日本統一」は、周辺の人物たちにもスポットを当てている。小沢演じる三代目侠和会の会長・川谷雄一や、かつて氷室が率いていた山崎組の子分にスポットを当てたスピンオフ作品を発売し、子分役の俳優たちも顔が売れるようになった。

 そのうちの1人は、これまでNHK・紅白歌合戦に4回出場を果たしている人気エアバンド・ゴールデンボンバーの喜矢武豊(40)。22年リリースの本編53作目から登場している。22年9月には初の劇場版「劇場版 山崎一門~日本統一~」が公開されたが、その主題歌「男の貧乏くじ」の作詞はなんと秋元康氏(67)が手がけた。さらに、昨年4月には本宮が主演の「映画『氷室蓮司』」が公開され、6月6日からは山口が主演の「映画『田村悠人』」が公開されている。

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