八神純子「楽曲がチリやメキシコで大人気」「昭和で伸び悩んだ作品が令和で圧倒的1位に」…“謎現象”のワケを本人と本気で考察!

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「黄昏のBAY CITY」が若者に刺さるのは「逆輸入ものを楽しんでいる感覚」?

 令和においてリスナーの心を掴んでいる理由をもう少し深掘ってみると、

「『FULL MOON』に収録されている別のシングル曲『NATURALLY』(Spotify第16位)も、アメリカのソングライター、フレイニー・ゴールドに“とてもいい”って褒められたし、この『黄昏のBAY CITY』は、私も周りのミュージシャンも、アメリカの音楽に憧れて作っていたんですね。それを、今若い人たちが聴いてくれているのは、逆輸入ものを楽しんでいる感覚なんじゃないかしら?

 今は打ち込みの音楽がほとんどで、しかも、それぞれが自宅の部屋で一人、声を張り上げずに作るというのが主流だと思います。けれど、あの時代は、みなさん歌唱力がすごくて。レコーディングでも、その歌声を聴きながら、“せーの!”って本気でぶつかり合いながら演奏しながら、ひとつの作品を作り上げていましたから」

 欧米の音楽に憧れた八神たちの音楽が、シティ・ポップとして海外で支持されることに対し、八神は「とても面白い」と笑顔を見せながら、こう続ける。

「当時の音楽は、クリックの音を聞きながら作る現代のものとはまったく異なるし、別物と言っても過言ではないかと。どちらが優れているとかじゃなくて、歌にそこまで感情を込めないほうが、現代的に聴こえる場合も多々ありますよね。現に、日本のゲームやアニメ関連の音楽は、海外でたくさんヒットしていますから、それぞれの魅力があるんだと思います。

 ただ、私は“昔ながらの作り方”を今もしているので、どうしてもお金がかかるんです。楽曲を売って、その売り上げを次の作品に充てるというサイクルでやっていくには、ストリーミングだと割が合わない(笑)。だから新作はCDやダウンロードで販売していますが、ストリーミングには出していません。ただ、昔に作った音楽をストリーミングを入口として聴いてもらえる点は、本当にありがたいと思っています」

 旧作については、海外で人気の「黄昏のBAY CITY」や「みずいろの雨」を韓国出身のDJであるNight Tempoがリミックスしたバージョンも、100万回再生を超える人気だ。彼の編集は、時に歌声を歪ませたり、テンポを急変させたりする部分もあるが、

「それはNight TempoさんのアートだからまったくOKです。今は、いろんな人がオリジナル音源のリミックスをしていますが、彼は正式に許可を取ってくださって、アーティストへのリスペクトもありますから」

 現代の制作方法やストリーミングの魅力を認めつつも、自分の音楽を作るうえでは従来のシステムを踏襲したい、という八神のスタンスには、柔軟さと折れない心が共存している。これは、中高年が日々の暮らしを送るうえでも、大いに学びがあるように感じた。

 次回は、昭和の音楽番組『ザ・ベストテン』での思い出や、ライバルであった中島みゆきの「時代」をカバーした経緯などを語ってもらおう。

【INFORMATION】
2025年6月より『 Zepp Round 4 〜with Learn To Fly〜 八神純子 LIVE』開催!

《Learn To Fly》
Gtr 是永巧一 Dr 佐藤強一 Ba 立川智也 Key & Cho 真藤敬利 土屋佳代

《スケジュール》
*2025.6.15@Zepp Sapporo
*2025.6.21@Zepp Namba(OSAKA)
*2025.6.22@Zepp Nagoya
*2025.6.29@Zepp DiverCity(TOKYO)

《チケット》
*全席指定席:8,800円 (税込)
各プレイガイドにて発売中

詳細は公式HPにて

【PROFILE】
八神純子(やがみ・じゅんこ)
◎1974年、第8回ポピュラーソングコンテストに「雨の日のひとりごと」(優秀曲賞)、「幸せの時」(入賞)で初参加。1978年、シングル「思い出は美しすぎて」でプロ・デビュー。さらに同年、シングル「みずいろの雨」がオリコン最高2位の大ヒットに。その後もシングル・アルバムともに数多くのヒットを飛ばし、 シングル「パープル タウン ~You Oughta Know By Now」がオリコン最高2位、初のベスト・アルバム「JUNKO THE BEST」はオリコン1位を獲得。’86年以降は活動拠点を米国に移すも、’11年の東日本大震災以降は日本でのチャリティー活動や全国ツアーも行う。以降も音楽活動を活発に行い、多くのファンを魅了し続けている。

臼井孝(うすい・たかし)
人と音楽をつなげたい音楽マーケッター。1968年、京都市生まれ。京都大学大学院理学研究科卒業。総合化学会社、音楽系の広告代理店を経て、'05年に『T2U音楽研究所』を設立し独立。以来、音楽市場やヒットチャートの分析執筆や、プレイリスト「おとラボ」など配信サイトでの選曲、CDの企画や解説を手がける。著書に『記録と記憶で読み解くJ-POPヒット列伝』(いそっぷ社)、ラジオ番組『渋谷いきいき倶楽部』(渋谷のラジオ)に出演中。データに愛と情熱を注いで音楽を届けるのがライフワーク。

デイリー新潮編集部

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