八神純子「楽曲がチリやメキシコで大人気」「昭和で伸び悩んだ作品が令和で圧倒的1位に」…“謎現象”のワケを本人と本気で考察!

  • ブックマーク

八神純子のSpotifyは海外リスナーが7割、チリの都市で多く聴かれているワケは

 では、ここからはSpotifyでの人気状況を見ていこう。まず、八神純子全体の月間リスナー数は約60万人。これは、’70年代から活動する女性歌手としてはTOP10レベルの人気だ。しかも八神の場合、’21年にSpotifyでヤマハに所属していた時代の楽曲が解禁されて以降、リスナーが急増し、その流れが’25年になっても続いている。

 リスナーのうち約7割が海外在住であり、人気の国と地域のTOP10は、1位アメリカ、2位日本、3位メキシコ、4位以下もブラジル、フランス、イギリス、カナダ、ドイツ、チリ、インドネシアと続く。大抵のベテランの邦楽勢なら、日本が8~9割を占め、4位以下は微々たる人数で誤差範囲となるのだが、彼女の場合は海外リスナーがとても多いのだ。

 さらに、人気の都市TOP5では、1位の東京(日本)と2位のサンチアゴ(チリ)が僅差で、3位以下もメキシコシティ(メキシコ)、サンパウロ(ブラジル)、ロスアンゼルス(アメリカ)と国際色豊かだ。これを八神に伝えると、

「チリの街が2位!! チリは、高校3年生の時に現地の大きな音楽祭(第17回『ビニャ・デル・マール国際音楽祭』)に出ているんです。スティングのような有名なアーティストらが世界中から来る大きな音楽祭なんですが、その影響かも!? いやあ、サンチアゴが東京と同レベルだなんて、ビックリしました!」

 ストリーミングサービスについては、独自の見解を持っているようで、身を乗り出してこう話す。

「先日、アメリカにいる娘の車に乗ったら、カッコいい曲が次々と流れてきたんです。聞けば、Spotifyを使って30秒ほど聴いて“イイ!”と思ったら、すぐに取り込んでいるんですって。でも、逆に自分に合わないと思ったら、“どんどん捨てちゃう”って言われて……。その“音楽を捨てる”という感覚が私にはなくて驚きました。だからこそ、今回のストリーミングのヒット考察は、私も興味津々です」

「黄昏のBAY CITY」、当時オリコン75位の楽曲が令和ではぶっちぎりの1位に!

 そんな八神のSpotify人気曲第1位は、’83年のシングル「黄昏のBAY CITY」。本作は’23年、“全世界で最も再生された’80年代の邦楽”ランキングにおいて、泰葉「フライディ・チャイナタウン」に次いで堂々の2位だ。ちなみに、3位は、八神同様に再評価ブームが高まる杏里の「Remember Summer Days」で、彼女たちの確かな人気ぶりが分かる。八神は’22年にNHKの音楽番組『うたコン』に出演した際、同番組の懐メロコーナーで、よく歌われる「みずいろの雨」ではなく、「黄昏のBAY CITY」を披露した。それだけこの曲が一般層にも広がっている認識があったのだろう。

 再生回数で2位以下に10倍以上も差をつけたこの「黄昏のBAY CITY」、今聴くと、ほどよいミドル・テンポで、よく通る女性ボーカルやおしゃれな演奏スタイルと、シティ・ポップのお手本のような作品だ。しかし、当時はオリコン最高75位と、それまでの八神のなかでもかなり低めの順位どまり。また、本作を収録したアルバム『FULL MOON』もオリコン最高32位で、’83年の前半にリリースした『LONELY GIRL』(オリコン最高6位)と比べても約1/3のセールスとなっており、シングル、アルバムともに大きく伸び悩んだのだ。

 本人にその理由を尋ねてみると、

「この後、事務所もレコード会社も移籍するのですが、だからって手抜きすることなく、プロモーションもいつも通り頑張ったんです。ただ、この前作で海外で発売した全篇英語のアルバム『I WANNA MAKE A HIT WIT-CHOO』(オリコン最高16位)は、ファンの方の反応が鈍かったので、その影響でさらに売り上げが下がったのかも。でも、シンガーとしては非常に勉強になった1年でした。それにしても、’83年は1年に3枚もアルバムを出していたんですね!? そんなに作品を乱発したら、いくらファンの方でも離れちゃいますね(苦笑)。今の私ならありえません!

 この『黄昏のBAY CITY』は、当時の私の作品では1、2を争う傑作だと思っていたんですが、40年経っていよいよ答え合わせができた感じです。“なーんだ、私、(答えが)合ってたじゃん!”なんて(笑)」

次ページ:「黄昏のBAY CITY」が若者に刺さるのは「逆輸入ものを楽しんでいる感覚」?

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。