時速100キロ超の飲酒暴走で「一家4人死亡」12歳長女は重体…「砂川暴走事故」で加害者が主張した「赤信号を見落とした理由」

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 第1回【「地元で有名なワル」2人が飲酒運転で時速100キロ超…「一家5人」を一瞬にして崩壊させた砂川死傷事故から10年】を読む

 いまからちょうど10年前の2015年6月6日、北海道砂川市で発生した交通死傷事故が日本に衝撃を与えた。犠牲となったのは軽ワゴン車に乗った一家5人。父母と長男、長女が命を落とし、九死に一生を得た次女も脳に障害を負うという悲惨な事故である。しかも、加害者の男2人は飲酒運転のうえ、レースのように競い合いながら時速100キロ超で走行していた。

 幸せな一家が一瞬にして崩壊するというあまりにも理不尽なこの事故に、世間からは激しい怒りの声が上がった。その後、この2人にいかなる裁きが下されたのか。事故発生時を振り返った第1回に続き、第2回では裁判の結果までを伝える。

(全2回の第2回)

 *** 

(「週刊新潮」2015年6月25日号「それでも死刑にならない! 幸せ5人家族を踏み潰した北海道『飲酒暴走のごろつき』」を再編集しました)

ハンドルを握ると人が変わる

 さらに、「いつか事故になるなと思っていた……」として、こう言葉を継ぐ。

「2人は友達とつるみ、Tの実家の前でよくバーベキューをして酒を飲むのです。実は、事件当日の夕方もそうだった。それで赤ら顔のまま運転して買い出しに行く。“缶ビール片手に運転”なんていうのもあるほど。あと、国道を猛スピードで走り回るのも5年くらい前からかな。ハンドルを握ると人が変わって、信号無視なんて当たり前。そういったことを注意する人もいたんだけど、あいつらは聞く耳をもたなかったね」

 なるほど、飲酒・危険運転が常態化していたわけだ。

 これに加えて、Kの“複雑な家庭環境”に触れるのは、古くからの住民である。

「両親が離婚して、父親の実家があるこっちに移ってきた。Kはうんと幼く、年の近いお姉ちゃんも一緒だったよ。父親は別れた女房に未練があったので、彼女を説得しに行ったんだけど、無理心中で2人とも亡くなってしまった。Kが10歳くらいのころのこと。それからは祖母に育てられたんです」

 そして今度は、心中した父親の弟、つまりKの叔父が実家へ転がり込んできた。悪い冗談のようだが、彼は仕事もせず、酒浸りの日々だった。住民が続ける。

「3年もしないうちに、祖母が亡くなったんだ。叔父はアル中がひどくなって子供たちにも手をあげるような始末。困り切っていたところにお姉ちゃんの結婚話が持ち上がって、その新居にKもくっついていった。彼には気の強いところがあるんだけど、それは頼れる人が次々に姿を消していったことの裏返しなんでしょうな」

殺人容疑で逮捕状を請求したが

 ところで、逮捕された2人を待ち受ける量刑はいかほどのものか。板倉宏・日大名誉教授によると、

「危険運転致死傷罪の最高刑は20年となります。5人を死傷させたあまりに悪質な行為として、T容疑者に最高刑である『懲役20年』の判決は十分あり得る。他方、K容疑者に対しては、人をひいて故意に引きずって死なせた可能性が高く、今後は殺人罪が適用され得る。となれば『懲役20~25年』の可能性が出てきます」

 先のデスクがこれを補足する。

「道警は当初、Kに関して殺人容疑で逮捕状を請求しました。が、裁判所から令状がおりず、ひき逃げで逮捕した経緯があるのです」

 それにしても――死刑との間には長くて深い“距離感”があるのは否めないのである。

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