70分1.5万円…没入型演劇「イマーシブ・フォート東京」に感じたキビしさ オープン2年目で数々の疑問が
東京・お台場から観覧車が消えて久しい。跡地の一角では現在、世界初を謳うイマーシブ・テーマパーク「イマーシブ・フォート東京」が営業している。来場者にも大なり小なりの“演技”が求められると聞いて、興味はあってもなかなか足が向かない、という人も多いのではないか。そんなひとりである消費経済アナリスト・渡辺広明氏が今回、意を決して初訪問。そこで感じた“キビしさ”とは――。
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【写真】4800円~24800円の高額ラインナップも 「イマーシブ・フォート東京」の演目 ほか
約40年前、大学1年の夏休みに、地元である静岡県浜松市の長崎屋(現在のMEGAドン・キホーテ浜松可美店)でお化け屋敷のアルバイトをした。普段は商品倉庫として使われている場所を臨時のお化け屋敷にして、暗闇の中で音を鳴らしたり、お化けに扮したりして来場者を驚かせる仕事である。没入感や非日常の体験を提供するという意味では、お化け屋敷は「没入型(イマーシブ)エンタメ」の原点だったのかもしれない。
そんなことを、お台場の「イマーシブ・フォート東京」を訪れて考えた。
没入型エンターテイメントの代表格として、2024年3月に華々しくオープンした施設である。アトラクションを訪れた観客が、演者と共に同じ空間で物語を進行させる趣向で、オープン当時、メディアの話題を独占したことでご記憶の方も多いのではないか。筆者はマーケットの動向を見る仕事をしているため、早く訪れるべきだったが、客側も演技することを求められると聞いて「恥ずかしい」と尻込みしてしまい、気がつけば訪問はオープンから1年2ヶ月も後になってしまった。
世界のイマーシブエンターテインメント市場は、2024年に約1,168億米ドル(約17兆円)規模に達し、今後も急成長が見込まれている分野である。そうした中で常設型の施設として誕生したのが「イマーシブ・フォート東京」だった。2022年に閉業した大型商業施設「ヴィーナスフォート」の建物を活用した完全屋内型施設で、ヨーロッパの街並みを模した前身の雰囲気はそのまま活かされ、噴水広場も現存。入場前から期待感が高まる演出の一部にうまく取り込んでいるなと感じた。
筆者が選んだ演目は…
今年3月には、開業1周年にあわせた大規模なリニューアルが行われた。いくつかのアトラクションを廃止にした代わりに、よりイマーシブに特化した施設になったとされる。
現在、用意されている演目には、19世紀フランスの世界が楽しめる「真夜中の晩餐会~Secret of Gilbert's Castle」、「ザ・シャーロック~ジェームズ・モリアーティーの逆襲」「今際の国のアリス The Ultimate」「東京リベンジャーズ イマーシブ・エスケープ」「江戸花魁奇譚」の5つがある。
筆者はNHK大河ドラマ『べらぼう』を毎週楽しみに観ていることもあって、「江戸花魁奇譚」を選んだ。結果的に、参加者が32人と少人数で、演者との1対1のやりとりが頻繁にあるため、初心者にはよいチョイスだったのではと思う。以下、アラフォー編集者と共に参加した58歳の筆者のレビューである。
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