飲み会で烏龍茶を頼むなら「水飲みぃや」の時代遅れ感…“呑兵衛のネット編集者”が語る「大酒飲みの方が多く払うくらいの配慮を」

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それなりに配慮は必要

 橋本アナの「ジンジャエールなら許せる」発言は、なんとなく気持ちは分かる。烏龍茶の場合、2リットル118円とかのペットボトルから300mlほどをドボドボと注いでいるわけだ。ジンジャエールの方が価格が高いため、そして家では絶対に作れないからこそ「許せる」ということになるのだろう。

 これは1980年代にミネラルウォーターがスーパーで並び始めた頃、「なんで水にカネを払うんだ」という異論が出たことと関係している。それと同様に麦茶と烏龍茶も安いパックを買って作ることができるため、ジンジャエールやコーラよりも格下扱いされているのだ。「なぜ、あなたはそれほどのお金(380円程度)を払ってまで、安くて手軽な飲料を頼むのだ? あなたのその利己的な行為が会全体の支払額を押し上げるのだ」という気持ちが根底にある。

 しかし、飲み会というものはそれなりに配慮が必要な場である。単価が安いソフトドリンクを頼む人の会計は1000円安くしてもいいし、給料の少ない若者も少し安くしていい。大酒飲み・大食いの人が「オレ、飲みまくり食いまくったから割勘は4000円にして、それ以外は出すよー」と言ってもいい。

酒を飲めない人がハンドルキーパーに

 こうした「機微」というものを無視したのが今回のくわばたの発言だったのだが、こんな発言をすると、元々あまり飲み会が好きではなかった人をますます飲み会嫌いにする結果となる。正直、酒を飲めない人はその会において大貢献者である。まず、会計が安くなる。酔っ払いの介抱も意識のしっかりしたこの人々が担うことになる場合が多い。

 さらに、これは「地方都市あるある」だが、酒を飲めない人がハンドルキーパーとなり、運転して各自を自宅まで届けてくれることもある。車で遠出をしたり、レンタカーを旅先で借りたりしても、飲まない人が運転手を買って出てくれるし、呑兵衛は自然に彼らにその役割を期待し、その好意に甘える。呑兵衛は彼らに支えられているわけであり、揶揄されるいわれは一切ない。

 こんなことを書くと「オレ達呑兵衛は酒税をたくさん払って社会に貢献しているんだ!」といった反論も来るだろう。が、それはあなたがそのカネを払ってでも酒を飲みたいだけのことです。エラソーに振る舞う理由にはなりません。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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