徴兵制も視野…「強いドイツ」は復活するのか 新首相の足を引っ張る“絶不調の経済”と“極右政党寄りの移民政策”
ドイツ経済は絶不調
富国強兵という用語が示すとおり、強い軍隊には好調な経済が不可欠だ。
ドイツは昨年、対外純資産が日本を抜いて世界一になったことで話題となったが、最近の経済は絶不調だと言っても過言ではない。2年続けてマイナス成長となり、今年に入っても芳しくない状況が続いている。
ドイツ商工会議所が27日、今年の経済成長率はマイナス0.3%になるとの予測を示すなど、戦後最長の3年連続のマイナス成長が現実味を増している。
トランプ関税が追い打ちをかけている。ドイツの対米国輸出は昨年に全体の10%強を占め、中国を抜いて最大となったが、今後は確実に減速する。ドイツ経済研究所(IW)は、トランプ関税によってドイツ経済が被る損害は2000億ユーロ(約32兆6000億円)に上ると試算した。
ロシアの安価な天然ガス輸入を断念したことでエネルギー価格の高止まりが続いていることも頭の痛い問題だ。メルツ氏は2023年に停止した原子炉3基の再稼働を主張していたが、連立を組む社会民主党(SPD)の反対で断念した。
財政と雇用も明るい材料が不足
メルツ政権は経済立て直しのために公共投資を大幅に増加する構えだが、その詳細は決まっていない。効果が表れるのも来年以降だ。
景気の悪化は財政に悪影響をもたらしている。ドイツ連邦政府の今年から2029年までの税収は昨年10月時点と比べて330億ユーロ(約5兆4000億円)下振れする見通しだ。
ドイツは緊縮財政を誇っていたが、今後は国債を大量発行せざるをえず、さらにはその状況が長期化する可能性も排除できない。
失業者数も増加傾向にある。5月の失業者数は予想以上に増加し、10年ぶりに300万人に近づいている。4月の失業率も6.3%と、新型コロナのパンデミック後で最悪だ。
IWの調査結果によれば、ドイツ企業の3分の1超が今年の人員削減を予定しており、雇用環境がさらに悪化するのは間違いないだろう。
[2/3ページ]

