「私の男友だちと3人でどう?」自由すぎる年下妻についていけない… 通じない“常識”に悩む44歳夫の夫婦関係
恋人はいたけれど絵梨さんに呼び出され…
そのまま2年近くがたち、絵梨さんは突然、「成田にいるよー」と電話をくれた。絵梨らしいと晴也さんは苦笑した。
「それから彼女は、ようやく仕事探しを始めました。英語ができて、なおかつ貿易関係の実務も多少はできるので、雇用してくれるところはたくさんあった。でも合うところを見つけるまでにはけっこう時間がかかったようです。それでもまったくめげたりへこんだりしなかった」
半年以上かかって、絵梨さんは自分に合う職場を見つけ出した。ここと決めれば、ものすごい集中力を発揮、あっという間に仕事を覚えていったらしい。晴也さんにはたまに連絡が来るくらいで、一緒に食事さえしてもらえなかった。
「1年後くらいですかね、『せんぱーい、ご飯おごってくださいよう』と突然、連絡がきた。僕は当時、絵梨をあきらめて他の女性とつきあっていたんですが、絵梨にそう言われたら行くしかない。どうせ絵梨とはつきあえるわけじゃないしと思って、軽い気持ちで会ったら、やはり気持ちが戻ってしまった。しかも絵梨は『あのとき愚痴を聞いてもらって助かった。ずっとちゃんとお礼を言わなければと思っていたのに、遅くなってごめんなさい』と。さらに、あのときの言葉を覚えてますかと。僕が好きだと言ったことです。実はつきあっている人がいると言おうと思ったけど言えなかった。口から出たのは、『今でも好きだ。結婚してほしい』という言葉だった」
「お互いに知らないことが多すぎた」同棲生活
彼女はすんなり頷いた。どれほど深くお互いを知っていたのかはわからない。知り合って3年たっていたが、手も握ったことのない関係だった。それなのに彼はいきなりプロポーズし、絵梨さんも「私もそう思ってた」と告げた。
「つきあっていた彼女にはひどいことをしたと思います。別れたいとしか言わなかったから。でも誰を傷つけてもいいから、絵梨と一緒になりたかった」
若いときの恋愛は残酷なものかもしれない。自分の欲望だけに一直線になってしまう。当時の恋人が晴也さんの悪口を言いふらしていたが、彼はまったく気にならなかった。言い訳もしなかった。誰に何と言われても、絵梨さんと一緒になれればそれでよかった。
「とはいえ、僕も絵梨もその後の青写真があったわけじゃない。結婚という形にこだわっていたわけではないので、まずは一緒に住み始めました。ふたりとも仕事が忙しかったので、仕事優先の生活でしたね」
それでも週末の1日は必ず一緒に過ごそうと決めた。お互いに知らないことが多すぎた。どんな子ども時代を送ったのか、何をされるとうれしいのか、何をされると嫌なのか。生活上のこだわりはあるのか、どういう状態が快適なのか。
「どんなに話しても話したりない。話しているうちに彼女への欲求がわいてきて抱きしめてしまう。肉体的な相性がとてもよかったんですよ。言葉の会話より体の会話のほうが先だよねと言い合って。あのころは本当に楽しかった」
遊びに来た彼の姉が、「ままごとのような生活だね」と言ったが、それのどこが悪いのかわからなかった。
「僕は意外とまじめな学生だったし、恋愛経験もあまりなかった。絵梨と一緒にいると、ただ楽しくて、子どもみたいに無防備だったと思います」
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