東西横綱が揃い「誰が優勝するかわからない場所」は減る…新横綱・大の里は「より相撲に集中できる環境作りを」【音羽山親方の夏場所総括】
2021年3月場所で現役を引退し、2年後の12月に音羽山部屋を創設した71代横綱・鶴竜こと音羽山親方。夏場所で技能賞を獲得した関脇・霧島のほか、弟子は8人に増え、部屋は活気づいている。親方もこの春場所から審判部に異動し、勝負審判として土俵下で厳しい目を光らせるようになった。そんな親方に、夏場所の土俵をあらためて振り返ってもらった。【ノンフィクションライター/武田葉月】
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1回でチャンスをモノにした大の里
――夏場所は、「綱取り」を狙う大関・大の里関が初日から13連勝。13日目に4度目の優勝を決めるという展開になりました。そして、場所後の5月28日には第65代横綱に推挙されましたね!
音羽山:春場所後の「総括」 で、私は「前に出る相撲を取れれば、横綱昇進は十分あり得る」と占ったのですが、連勝で優勝を決めて、1回でチャンスをモノにしたことには驚きました。
というのも、大の里は私も審判として帯同した4月の春巡業中、場所前の横綱審議委員会稽古総見では、けっして調子がいいとは思えなかったからです。本人も「体調を崩して稽古できない日があった」と語っているように、稽古総見の時は、横綱・豊昇龍に歯が立たない感じでした。
大の里は「初日に入っていければ」と、初日に照準を合わせることをモットーにしていますが、初日(若元春戦)、2日目(高安戦)に勝ったことで、1日1日ギアを上げていったのでしょう。
相撲に集中できる環境作りも必要
――大の里関は、春場所に続いての連続優勝となりましたが、夏場所はより「強さ」が光った優勝のように感じました。先場所との違いはどのようなところでしょうか?
音羽山:対戦相手は春場所とほとんど変わらないわけなので、相手の相撲を徹底的に研究したところがよかったんじゃないのかな? 先場所敗戦した、若元春、高安、王鵬にキッチリ勝って、落ち着いて相撲を取っていました。特に11日目、これまで対戦成績が五分で、2敗で追う小結・若隆景戦は、落ち着いているように見受けられました。
7月の名古屋場所では新横綱として登場するわけですが、横綱は成績を残さなければ引退を余儀なくされる地位です。大の里は、辞めるまでトップで引っ張っていかなければならないという使命があります。より相撲に集中できる環境作りも必要でしょうね。
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