「コメ5キロ2000円台」に執念を燃やす小泉農相が“敗北”するリスク…異色の兼業農家が「備蓄米の放出効果は限定的」と警鐘を鳴らすワケ

国内 社会

  • ブックマーク

農家を国家公務員に

 豊作でも不作でも農家には常に一定の収入が入るよう国が税金を使って調整する。この制度を実施すれば、ひょっとすると離農は減るかもしれない。だが……。

「しかし後継者不足を解決できるほどのインパクトはありません。極論にはなりますが、私は以前から農業従事者は“国家公務員”にすべきだと主張してきました。私たち農家は農作物を作ることで食の安全保障に寄与しています。土地と景観を守り、水田はため池の機能も果たすので国土の保水にも役立っています。農業もまた、日本を守り、公共に奉仕する仕事だと言えるのではないでしょうか」(同・木村氏)

 木村氏は「長期的な視点に立てば、日本の食糧自給率を上げることと、新たに農業に参入する人を増やすことが最大の課題になると思います」と言う。

「もしコメ農家の身分が国家公務員になれば、生活は安定しますから就農者が増える可能性がある。公務員ですから目先の利益を追い求めず、質の高いコメ生産を目指すこともできるでしょう。結婚や出産、引退後の年金生活といった人生の節目でも、公務員という地位は有利に働くと思います。若い人たちにも魅力的な仕事だと考えてもらえるかもしれません」

農政の未来とは?

 木村氏は「腹が減っては戦ができぬ」ということわざを思い出すという。食糧自給率が低ければ、他国の侵略に脆弱な国になるのは理の必然だ。もし日本人が飢えに苦しむような事態に陥れば、日本国憲法の言う「健康で文化的な最低限度の生活」など送れるはずもない。

「田んぼは農家だけのものではなく、国民共通の財産だという意識を持つことが大切なのではないでしょうか。小泉農水相は5キロ2000円のコメを店頭に届けたら終わりではなく、この国のあり方を見据えた農政を行うことが求められています。今回の米騒動をきっかけに、日本の農政や未来のあり方が広範に議論されるような、そんな気運が醸成されることを願ってやみません」

 第1回【江藤前農水相は「主婦の皆さま」の買い急ぎと過去に批判も…“異色の農家”が論破するコメ高騰の知られざる理由「猛暑で小粒化」「倒れた稲が雨に浸かる」】では、なぜコメの高止りが続いているのか、生産現場におけるリアルな現状について詳細に報じている──。

註1:【コメ価格】小泉進次郎農水大臣のもとで下がる?下がらない? 識者も意見分かれる『石破総理の5kg3000円台発言』『コメの絶対量が足りない』【解説】(MBS NEWS:5月23日)

【木村和也 プロフィール】
1971年、新潟県生まれ。東京農工大学大学院工学研究科博士課程中退。山と溪谷社勤務を経て、2010年株式会社フィールド&マウンテン創業に参画。現在、同社発行の山登りのフリーペーパー『山歩みち』の編集をしながら稲作農家を営む兼業編集者として活動。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。