「コメ5キロ2000円台」に執念を燃やす小泉農相が“敗北”するリスク…異色の兼業農家が「備蓄米の放出効果は限定的」と警鐘を鳴らすワケ

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適正価格はいくらなのか?

 木村氏は「ちなみに5キロ2000円台のコメ、これは21年産等のいわゆる古米です」と言う。

「これらのコメはもちろん食べられるとはいえ、これまでその多くは飼料用として国は処理してきたコメです。飼料用としていくらで卸したかはわかりませんが、先の入札事例といい、ここでもまた政府は儲けたいのか、と下衆の勘ぐりをしたくもなります。それはさておき、コメの価格が本当に下がるためには今後数年間、大豊作が続く必要があるでしょう。もし小泉農相が本気でコメの価格を下げたいのなら、カルフォルニア米を含む外国産米の流通量を増やすほうが手っ取り早いと思います。関税を下げる手もあるかもしれません。ただし、離農者がさらに増えるという国家的な損失を覚悟する必要があります」

 税金や社会保障費の負担に悲鳴を上げる消費者は多い。そこにコメ価格の高騰が追い打ちをかけた。一方、コメ農家もコメ価格の低迷に長年、苦しんできた。

 石破茂首相は5月21日の党首討論で「コメの価格は5キロ3000円台にならなければならない」と発言した。

 この5キロ3000円台だが、消費者の多くが適正価格だと判断することでも知られている。ならば5キロ3000円台は、農家にとって妥当な金額なのだろうか。

税金投入の必要性

「もし全国平均で5キロ3000円となり、その全額が直接、農家の懐に入れば、とりあえずほっと一息つく作り手は相当な数に上るでしょう。このあたりにコメの適正価格を解く鍵があるのは間違いないと思います。ちなみに私は5キロ3500円の直販を行い、一定程度の利益を出しています。ただ、これも現時点での話です。燃料費や肥料費、機材などの高騰は今も続いており、60キロいくらで採算が取れるのか予測が厳しい状況です。その一方で、価格の問題では農家も猛省が必要でしょう。ネット通販と流通のシステムは飛躍的な進歩を遂げたのに、販路を自分で探せない農家は珍しくありません。安全で美味しいコメを作れば、必ず評価してくれる消費者の方々に出会える。これは声を大にして言いたいです」(同・木村氏)

 コメ5キロで3000円が農家に直接入るように制度設計を改めても、当たり前だがコメは農作物だ。工業製品とは異なり、不作の年もある。

「今回のコメ高騰で、価格が上昇しても農家に恩恵はほぼないことを改めて実感させられました。巷ではJA悪玉論が盛んですが、彼らが業者に卸す際は2割しかマージンを乗せていませんし、日々の細かい営農指導を考慮すれば、農家にとってはむしろ良心的だと言えます。ところが、南魚沼産コシヒカリだけを見ても、小売の段階ではその末端価格がJA買い取り価格に対して倍に跳ね上がっているのです。もし農家の収入を確保し、消費者の求める“適正価格”で販売するのだとしたら、やはり税金で農家の収入を補償するしかないでしょう。ただし、それでも現状維持にしかならないという点は強調させてほしいと思います」(同・木村氏)

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