キリン、富士通も…導入企業広がる「AI採用」で就活生がやってはいけないこと 「記述内容は面白いのに評価されない」意外な落とし穴

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「AIウケ」の落とし穴

 ただ、「AIウケ」だけを狙いすぎると、思わぬところでつまずく可能性もあります。というのも、最終的な採用判断を下すのは、やはり人間だからです。

 面接の形式には、大きく分けて「プレゼン型」と「キャッチボール型」があります。

 プレゼン型は、質問に対してある程度まとまった長さで自分の考えを述べるスタイル。AI面接は多くの場合こちらの形式を採用しています。背景には、自然なやりとりを行うキャッチボール型の対話をAIで再現するのが、技術的にまだ難しいという事情があります。

 そのため、就活生の中には、AI選考を突破するためにプレゼン型への対応力ばかり高め、「トークのテンプレート」を作りこむ人も少なくありません。

 それ自体は悪いことではありませんが、問題はその先です。

 現在の新卒採用において、最終面接までAIに任せることはほぼありません。たとえESや1次面接でAIを導入していても、最後の判断は必ず人間が担います。

 特に最終面接を担当する役員や経営者は、えてして「対話」を重視する傾向にあり、彼らは内容の論理性よりも、「ちゃんと会話できるか」「一緒に働きたいと思うか」といった直観・感覚を重視しています。

 用意された説明がどれだけ完成度の高いプレゼンでも、相手とキャッチボールをしようとする姿勢が見えなければ「コミュニケーションに不安がある」と判断されてしまいかねません。

 AIに伝える話し方と、人と対話する姿勢、どちらも大切ですが、最後に問われるのは後者なのです。

 だからこそ、テンプレを丸暗記しないこと。「こう聞かれたらこう答える」ではなく、自分の言葉で語れるように面接練習をしておきましょう。

 また対話は、会話の「間」や「相槌」などノンバーバルな部分も大切です。一方的に話して終わり、ではなく、相手の反応を見ながらうなずいたり、アイコンタクトを積極的に取ったりする、自然なコミュニケーションを、今でこそ意識してみてください。

 いくらAIが普及した時代とはいえ、採用の本質は「人」であることに変わりはないのです。

【出典】
※1.厚生労働省『AI・メタバースのHR領域最前線調査報告書』
※2.時事通信,https://sp.m.jiji.com/article/show/3478336
※3.株式会社マイナビ『2024年9月度 中途採用・転職活動の定点調査』

安藤 健(あんどう けん)
株式会社人材研究所ディレクター。青山学院大学教育人間科学部心理学科卒業。2016年に人事・採用支援などを手掛ける人材研究所へ入社し、18年より現職。これまで数多くの組織人事コンサルティングプロジェクトや大手企業での新卒・中途採用の外部面接業務に従事。著書に『人材マネジメント用語図鑑』(共著/ソシム)、『誰でも履修履歴と学び方から強みが見つかる あたらしい「自己分析」の教科書』(日本実業出版社)、『これで採用はうまくいく ほしい人材を集める・見抜く・口説くための技術』(共著/秀和システム)。

デイリー新潮編集部

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