まじめ一筋で女性を知らずに結婚…「おそらく妻も」 お店で特訓して臨んだ49歳夫“試練の夜”の結果は
「僕たち、まったく夫婦らしいことをしていない」
妹は独立していたが、母は太一郎さんの新居近くに住んでいた。それも淑子さんの両親の配慮である。どうしてそこまでよくしてくれるのか、自分と結婚することにどれほどのメリットがあるのかさっぱりわからなかったと太一郎さんは言った。
「だけどはたと気づいたら、結婚前も結婚後も僕たち、まったく夫婦らしいことをしていないんですよ。実は僕自身が女性を知らなかった。そしておそらく淑子も……。したい気持ちがないわけじゃないけど、どういうふうに誘うべきなのか。ふたりとも初めてって悪夢ですよね」
突然、太一郎さんがそんなことを言い出したので、うっかり笑ってしまった。すると彼もようやく緊張感から解き放たれたのか、少し笑みを浮かべた。そして「恥ずかしい話だけど事実なので」と言い訳をした。
「でも夫から誘わないとレスになって、妻が欲求不満になると雑誌で読んで……。したことがないのにレスというのも変ですけど。とにかく夫婦になったのだから、しなくちゃいけない。しかたがないから、意を決して風俗に行って教えてもらいました。相手をしてくれた女性に正直に話したら、『それは大変。がんばりましょ』って」
淑子さんを誘ったら…
数回通って、なんとか淑子さんを誘ったら、途中ではねのけられた。ごめんなさい、その気になれないの、と。おお、しなくていいんだと彼はホッとした。彼自身、教えてもらっていくらか自信はついたものの、本質的に「ああいう行為」は好きになれなかったのだという。
「子どもをもつ機会はないんだなと思いましたが、それでもいいかとも思った。淑子の影響を受けて僕も犬が大好きになっていたし、ふたりで犬を育てながら暮らしていくのも悪くない」
淑子さんはそれについては何も言い訳しなかった。1度だけ、彼が「どうして嫌なの?」と聞いたのだが、答えようとしなかったという。ただ、過去に嫌な思いをしたということでもないらしい。
「箱入り娘すぎたんでしょうか。結局、淑子の親も、世間の体面上、娘は結婚したという事実がほしかったのかもしれない。あとから知ったんですが、彼女は見合いを20回くらいしていたらしいんですよ。でも誰であっても首を縦に振らなかった。僕なら自分の言うことを聞いてくれると直感で思ったのかもしれません」
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太一郎さんは、ある意味で「筋」を通しここまで生きてきた。そんな彼が「こんなことになるなんて」と涙ぐむ事態の一部始終は【記事後編】で紹介している。
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