中国資本の高級リゾートが経営破綻で「ニセコバブル崩壊」報道…専門家は「鬼怒川温泉の教訓」を指摘
鬼怒川温泉の急激な変化
テレビに取り上げられるなどしてブームが起き、観光客が一気に増えた場合、地元のホテル経営者は急いで部屋数を増やそうとするだろう。
「50年先の日本では人口が減少している。50年先だと外国人観光客の実数も予想できないから慎重になろう」と考えるホテル経営者は少数派に違いない。
「少なくとも数十年の時間軸を見据える都市計画や住民の合意を丁寧に取りながらゆったりと進んでいくまちづくりと、年度がベースの観光振興には、本質的なギャップがあるのです。そうしたギャップが最も劇的に現れた観光地の一つとして、栃木県日光市の鬼怒川温泉が挙げられます。先日も現地を調査したのですが、もちろん鬼怒川温泉は今も観光客が訪れます。ところが鬼怒川沿いに2キロほど北上すると、ホテルの廃墟群が姿を見せるのです」(同・西川准教授)
鬼怒川温泉は300年以上の歴史を持つと言われる。幕末から明治維新という歴史の激動期であっても、当時の鬼怒川温泉は非常にゆっくりとしたペースで景観が変わっていたと考えられる。
ところが戦後、高度成長で団体旅行が盛んになると、鬼怒川温泉には需要を見込んで大型のホテルが多数建設された。一気に景観が変わったわけだが、バブルが弾けると個人客が主流となり、時代に取り残されたホテル群は廃墟と化してしまった。
ニセコが廃墟になる可能性
観光振興という短期的な視野による開発事業が、中長期的な視野に立つべきまちづくりに悪影響を及ぼした代表例が鬼怒川温泉というわけだ。廃墟は今も賑わう鬼怒川温泉の景観を損なうことは言うまでもなく、治安を悪化させる懸念もある。
「観光の視点だけに立ってまちを開発すると、ピーク時の需要に対応させる傾向が強まります。観光地としての人気が永遠に続けば問題ないでしょうが、観光客のニーズは変わることのほうが多い。今は外国人観光客に人気を集めるニセコのホテルが、鬼怒川温泉のような廃墟群に変貌してしまう可能性はゼロではないのです。こうした視点から考えると、たとえ観光地であっても、まちづくりの基本である長期的な時間軸も大事にしながら観光振興を考えるべきでしょう。そして観光を目的とする開発に対しては、国や自治体はある程度、抑制的な政策を採ることが求められていると言えます」(同・西川准教授)
第3回【SNS上に外国人観光客への非難が殺到する“本質的な理由” 観光学部の学生も「海外に行かない」現状?…“被害者視点”に偏った議論を打開できるか】では、なぜネット上で外国人観光客に対する差別的な投稿が蔓延しているのか、その意外な原因について詳細に報じている──。




