5月22日の“若手采配”で明暗分かれた「広島・新井監督」と「日本ハム・新庄監督」 残念だった“不可解采配”と明るい未来を予見させた“名采配”とは

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新庄監督の期待に応えた台湾出身の右腕

 広島とは、対照的に期待の若手に思い切った起用をして成功した事例もあった。その選手とは、日本ハムの右腕、孫易磊である。

 孫は台湾の出身で、2023年に行われたU18W杯で台湾のエースとして活躍。多くの球団が獲得に乗り出していたが、昨年から日本ハムと4年契約を結び、育成選手として入団している。今年は開幕から二軍で結果を残し、5月21日に支配下登録された。

 そんな孫の一軍デビューとなったのは、5月22日のソフトバンク戦だった。試合は両チーム譲らず3対3の同点で8回を終了。そんな緊迫した展開の9回表。新庄剛志監督は孫をマウンドに送り込んだ。

 今年2月で20歳になったばかりの投手には、かなりの重圧がかかる場面だったが、孫はこの回を三者凡退に抑えると、続く10回も先頭打者の牧原大成に内野安打を許すも、後続を抑えて2イニングを無失点という見事なデビューを飾った。

 試合は、孫の後を受けて登板した池田隆英が11回に柳町達に決勝のソロホームランを浴びて、4対3で敗れたものの、孫とチームにとっては、収穫は大きかったといえるだろう。

今後の活躍が期待される孫易磊投手

 それを証明したのが5月25日の楽天戦だ。1対1の同点のまま、延長11回を終了。12回表の日本ハムの攻撃も0点に終わり、この時点で勝ちはなくなったが、その裏を任せられた孫は、最速154キロのストレートと、ブレーキ鋭いチェンジアップを武器に相手打線を三者凡退に抑えて、引き分けに持ち込んだ。

 そのピッチングはとてもプロ2戦目の投手とは思えないほど堂々としており、デビュー戦の経験が生きたようだ。

 日本ハムは、パ・リーグで現在首位を走っており、先発投手陣は12球団トップの10完投を記録するなど、強力である一方で、リリーフ陣は少し安定感を欠いている。孫が勝ちパターンに定着すれば、チームには大きなプラスである。こうした面からも、デビュー戦での抜擢が持つ意味は大きかったと言えるだろう。

 もちろん、期待の若手をむやみやたらに抜擢すれば、成功するわけではない。ただ、場合によっては思い切った起用も選手の成長のためには必要であり、先週の広島と日本ハムではその明暗がはっきりと分かれたように見えた。この決断が、今後のシーズンにどう影響してくるのか。ファンの方々には、引き続き、注視して頂きたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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