5月22日の“若手采配”で明暗分かれた「広島・新井監督」と「日本ハム・新庄監督」 残念だった“不可解采配”と明るい未来を予見させた“名采配”とは
野球においてはあらゆる選択の場面があり、その采配によって勝敗が分かれる。先週の配信記事「5月16日の中日と阪神は『采配ミス』で“勝てた試合”を落とした?」では、勝敗を大きく分けた継投、代走の起用について紹介したが、今週は目先の勝敗だけではなく、チームの将来を左右することになる、若手選手に対する“采配”についてポイントとなったシーンを取り上げたい。【西尾典文/野球ライター】
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広島ファンから疑問の声があがった新井監督の“不可解采配”
まずセ・リーグで大きな話題となったのが、5月22日にマツダスタジアムで行われた広島対ヤクルト戦だ。
試合はヤクルトが1回に宮本丈のタイムリーで1点を先制。広島は2回に坂倉将吾のセカンドゴロで追いつくも、3回にヤクルトはオスナのショートゴロで再び1点を勝ち越す。
そのまま、終盤までヤクルトが1点をリードする展開となったものの、8回に広島が新外国人のモンテロがタイムリーツーベースを放ち、再び同点。その後は両チーム譲らず、延長12回、2対2で引き分けに終わった。
議論を呼んでいるのが、延長11回の広島の攻撃だ。先頭の石原貴規がライト前ヒット、続くモンテロが四球を選んでノーアウト一・二塁のチャンスを作る。ここで迎えるバッターは、ドラフト1位ルーキーで、前日に一軍デビューを果たした佐々木泰だった。
二塁走者は石原に代わって大盛穂を器用。ヒットが出れば、サヨナラ勝ち。マツダスタジアムのボルテージも最高潮を迎えたが、ベンチは、佐々木に送りバントのサインを出した。
結果は、キャッチャーが打球を処理して、三塁で大盛が封殺されて失敗に終わる(記録はキャッチャーゴロ)。後続も倒れて、無得点に終わった。新井貴浩監督の“消極的な采配”に対して、広島ファンからは多くの疑問の声があがった。
バント指示が「合理的でなかった」理由
佐々木は県岐阜商時代から評判のスラッガーで、青山学院大でもリーグ戦通算12本塁打、全国大会でも3本塁打を放ち、前述したように昨年のドラフト1位で入団している。
昨シーズン、得点力と長打力不足が課題となっていた広島にとっては、まさに佐々木は“希望の星”と言える新人だ。この日の第1打席には、プロ初安打となるライトへのツーベースを放ち、第3打席にもセンター前ヒットでマルチヒットを記録し、結果も残していた。
そんな選手だからこそ、一打サヨナラの場面で佐々木のバットに期待したファンも多かった。仮に、ここで佐々木が凡打に倒れて無得点に終わったとしても、その経験は、彼にとって大きな財産となったのではないだろうか。
もちろん、広島は首位争いを演じているチームであり、目先の1勝をとりにいくために送りバントという選択肢をとることは理解できる。ただ、それであれば、小技が持ち味である上本崇司がベンチに残っていた。上本をピンチバンターで起用した方が、作戦の成功率が高かったのではないだろうか。
また、この後に代走で起用された堂林翔太も打撃のイメージが強いが、バントの上手さはチームでトップクラスと言われている。それを考えると、佐々木をそのまま打席に立たせて送りバントを指示する……これは、どう考えても合理的な作戦ではない。
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