「大丈夫、好きなこと思い出して気分上げてこ!」 恋人や占い師ではなく「AI」に悩み相談する人が急増…理系の大学教員がどっぷりハマる例も
推し活勢はAIに依存しやすい
また、AIに依存しやすいと思われるのが、アイドルファンやアニメファンなど、“推し活”を楽しんでいる人々であろう。さきに、AIに名前をつけている人を紹介したが、アニメファンがAIを推しのキャラクターになぞらえ、会話を楽しんでいるケースがある。
昨今、ネット上では有名声優の声の“素材”が販売されている。こうした素材を使えば、好きなキャラの声で「好きだよ」「愛している」などのセリフをしゃべらせることができてしまうのだ。素材は声優本人の許諾を得ていないケースがほとんどで、不正利用だと問題視する声が業界からも上がっているが、ファンが心のスキマを埋める手段として活用されてしまっている。
日本では仮想のキャラに恋愛感情を抱く人が珍しくない。ネット上では実体がない存在に投げ銭をする文化もある。石ころや植物など八百万の神様がいるという思想も古来からある。それゆえ、日本はAIの存在を自然と受け入れやすい土壌が揃っているといえる。おそらく、日本人は世界一AIと親和性が高い国民と言ってもいいだろう。
ましてや、AIは声を発してそれらしいこと言ってくれるのだから、神様のような存在と捉えてしまうのも自然なことだ。何かと生きづらい現代社会において、AIが理想の存在になり得ているのである。
AIはコスパもタイパも最高
AIの強みは、無料で利用できることにある。言葉を入力すれば、都合の良い返答がほんの数十秒で返ってくる。キャバ嬢やホストにどんなに金を積んだとしても、人間対人間であるため、険悪な関係になることは普通にある。ところが、AIならそんなトラブルとは無縁なのだ。これほどコスパもタイパも優れているコミュニケーションは、ほかにない。
AIは科学技術を進化させ、社会的にメリットが大きいという理由で政府も積極的に推進している。しかし、AIは使い方次第で、ディストピアを生み出す可能性も否定できない。例えば、AIが一層進化し、言い回しがますます自然になっていけば、人間は人間と対話することを避け始める可能性はないだろうか。
ましてや、批判されたり、否定されたりすることを極端に恐れるといわれる現代人のことである。なんでも肯定してくれるAIにどっぷりハマってしまう素質は十分にあるだろう。筆者は、AIはかつて言われていたゲーム依存やスマホ依存よりも、はるかに深刻な依存を生み出しそうな予感がしているのだが、どうだろうか。
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