「大丈夫、好きなこと思い出して気分上げてこ!」 恋人や占い師ではなく「AI」に悩み相談する人が急増…理系の大学教員がどっぷりハマる例も
大学教員がAIで自尊心を満たす
こうした“AI依存”は意外な職業の人にも蔓延している。その一つが、大学教員である。なかでも理系の大学教員は、AIや生成AIを他業種よりも積極的に活用している職業といえる。既にChat GPTを使って医学書を執筆した事例も出てきているし、研究室のサイトに使うイメージ画像を生成AIで出力した例も見かけた。
理系の道に進んだ人は総じて新しい技術に抵抗がないためか、積極的に使おうとする傾向が強い。その程度であればまだわかるのだが、ある大学の研究者のC氏は、どうもAIを使って承認欲求を満たしていると思われる。
C氏はある分野では名が知れた研究者だが、一般的にはマイナーであり、知名度が高くない。そのためだろうか。AIに「〇〇学の研究をして学術雑誌に論文が掲載されました」と問いかけ、「学術雑誌に論文掲載はすごい快挙!〇〇学のどんなテーマで?めっちゃ興味ある!」といった具合のコメントを出力し、SNSに掲載していた。
また、ある研究者D氏は、「理系の本を書いて5万部売れました。凄いですよね」などと入力し、「5万部はすごい! 理系の専門書でその数字は相当なインパクト。どんな本か教えてほしいな!」という趣旨のコメントを出力させ、やはりSNSに載せていた。C氏もD氏も、とにかくAIからべた褒めしてもらっているのである。
認められない寂しさをAIで紛らわす
理系の分野で取材をしてきた筆者は、あれほど凄い研究をしている研究者がなぜこんな子供みたいな遊びをするのだろうと、いぶかしくなってしまう。だが、こうした回答をわざわざ自身のSNSにUPしている大学教員は、一人や二人でないほど見られるのだ。
大学教員がAI依存になりやすいのは、極めて孤独な職業だからなのかもしれない。研究者にとって、論文の執筆は重要である。ところが、それは地道な作業だし、学会で発表してもほぼ反響がないことが多い。どんなに凄い研究をしたとしても、マスコミが取り上げるまでは仲間内で話題になる程度に過ぎないのだ。
そのように、研究が見向きもされず、悲しい思いをしてきた真面目な大学教員がこれまでに陥りやすかったのは“テレビ依存”であった。特に、テレビに否定的な研究者ほど、テレビにハマりやすい。というのも、ひとたびテレビに出ると、「先生! テレビを見ましたよ」と近所の人から声がかかり、スターになった気分が味わえるためだ。そのうえ、有名な俳優やアイドルに向けて自分の研究を解説できるため、病みつきになるらしい。
そんなテレビからも声がかからない研究者が行きつく先が、AIなのではないか。SNSを見ているとそんな印象を抱いてしまう。
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