外国人投資家が爆買いの「タワマン」にも税金投入 補助金1兆円超…誰のための開発? 専門家も疑問符
晴海フラッグ──インバウンド投資の実例と実態
東京都が建設を主導した晴海フラッグは、「ファミリー向けマンション」という当初の趣旨とは裏腹に、今や国内外の投資家による“買い占め”の象徴となっています。
東京オリンピック選手村跡地を活用したこの大規模開発は、販売初期から申し込みが高倍率となり、関心の高さを示していましたが、実際に販売が始まると投機目的の購入者で溢れ、次々と転売住戸が出る結果となりました。
そうした中、NHKは2024年6月に「追跡 晴海フラッグ ファミリー向けマンションがなぜ投資の舞台に」という特集を放送し、晴海フラッグの所有者実態について詳細な調査報道を行いました。
およそ1000戸におよぶ世帯の登記簿を調べた結果、外国人の所有者割合は予想に反して数パーセントであり、日本人の個人所有の他に、法人での所有がかなりの数を占めていることがわかりました。
調査の時点で3割以上が空室同然のままであり、地域への経済効果をもたらすはずの「居住実態」が伴っていないことも分かりました。これでは、「再開発には公共性がある」という説明も説得力を欠いてしまいます。実態はインバウンドなどの資金も含む、法人・投資目的の“爆買い”が起きていたわけです。
私の知り合いの会社経営者も「法人として超高級マンションを2戸所有しています」と話していました。2戸で数十億円もするそうですが、会社が出した利益を不動産に換えて、さらに運用するそうです。実需の個人所有ではなく、法人が資金を不動産に換えて運用するという投機的発想には驚かされます。
今後の展望と課題
今後もタワマン投資へのマネーの流入は続くと見られますが、都市の居住性や社会の公平性を守るためには、「誰のための都市か」という問いがますます重要になります。
建設コストの増加により、再開発にかかる費用も増しています。建て替え計画の白紙化が決まった「中野サンプラザ」にも、400億円以上もの多額の補助金が支出される予定でしたが、それでも建設コストの増加をカバーできなくなりました。
野村不動産が「採算難」を理由に新たに提示していた「住宅を1.5倍に」という案を、酒井直人・中野区長が拒否したのは、「公平性」という観点では真っ当な判断だったように思います。
海外投資マネーが実際に地域社会に貢献をもたらすようにするには、一定の規制と誘導策が必要でしょう。
たとえば、神戸市が推進しようとしている「空室税」の導入や、一定期間の実居住義務、転売制限、管理責任の明確化など、政策的手段が必要な時代に突入したと感じます。
タワマンという“都市の象徴”が、住まいという形ではなく投資の道具や目的物となる現状を見直す時期に来ているのでしょう。
[3/3ページ]



