外国人投資家が爆買いの「タワマン」にも税金投入 補助金1兆円超…誰のための開発? 専門家も疑問符

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中国の難関大に比べれば「東大入試は簡単だから」

 そんな不動産投資ビジネスを分析する上で無視できないのが、中国人投資家の存在です。中国本土では資本規制や経済成長鈍化が進み、香港でも政治的不安が続いています。こうした背景から中華圏の富裕層の間では、海外に資産を分散しようとする動きが強まっています。

 その対象の一つとなっているのが、「東京のタワマン」です。

 円安や治安・教育環境の整った日本の都心タワマンの高級物件が、ある意味で“資産の避難場所”として機能しているのです。

 東南アジア最大級の不動産ネットワークである「Juwai IQI」や「PropertyGuru」などのプラットフォームで、近年、日本の物件の閲覧数が急増しています。

 麻布台ヒルズや虎ノ門、晴海フラッグなどは特に人気で、現地富裕層による“現金一括購入”のケースも多く報告されています。

 また、競争率の高い中国本土の大学受験と比べると、「東京大学に入学する方が簡単」という評判もあり、東大近辺に移住する中国人も増えてきています。

 文京区の小学校では、日本語が話せない中国人の小学生が多くなりすぎて、中国人だけのクラスを作って日本語学習の授業を実施するなど、以前にはなかった状況が起きているそうです。

 東京は国際都市でありながら、住宅価格が香港やシンガポールと比べて相対的に割安であることも、中華圏の富裕層が魅力を感じる理由となっています。

大手不動産デベロッパーやゼネコンがタワマン建設に群がる理由

 住宅需要が長期的には減少する可能性が高いにもかかわらず、都市部でタワマンの供給が続く理由は、デベロッパーやゼネコンの「ビジネス」の側面からも説明ができます。

 タワマン建設の多くは、「市街地再開発事業」として、国や自治体から補助金を得ることができるのです。

 タワマンの建設に「税金が投入されている」と聞き、驚く方もいるでしょう。

 共同通信の調査によれば、全国118地区で進行中の市街地再開発の約9割に公的補助金が投入されており、その総額は約1兆543億円に上ると報告されています。

 これらの「再開発プロジェクト」の多くは、タワーマンションの建設を含んでいます。しかし、それが地域住民に十分な恩恵をもたらしているかについては、疑問視する声もあります。再開発によってタワマンが建てられても、地域住民への直接的な利益は限定的であるとの指摘です。

 市街地再開発事業における補助金の割合は、事業内容や条件によって異なります。国土交通省の資料によれば、補助項目として「施設建築物及びその敷地の整備に要する費用の一部」が挙げられていますが、具体的な補助率については明記されていません。

 再開発事業の一例として、東京都千代田区の「神保町一丁目南部地区第一種市街地再開発事業」を見てみましょう。このプロジェクトでは、総事業費約645億円のうち、約8%にあたる51.6億円が千代田区からの補助金で賄われています。

 建築コストの一部を補助金で賄うことで、不動産デベロッパーらの資金調達コストが軽減し、より「儲かる構造」になっているのです。

 問題は、こうした再開発に投入されているのが「税金」であるという点です。多くの日本人には手の届かない1億円以上のタワマン建設に、数十億円の公費が使われていることには違和感を抱きます。ましてそのタワマンの購入者が海外の富裕層だとしたら……。

 タワマン建築は、いったい誰のために行っているのでしょうか――。

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