陸上日本代表からシャインマスカット農家に転身! 木村和史さんが語った1年目の“やらかし” 「100万円近い損害が」

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「どれだけ陸上がストレスだったのかって」

 失敗もありながら、それを糧に奮闘した結果、昨年、うれしいことがあった。

「シャインマスカットの大部分を出荷するJAの中で、最高ランクで取引させてもらえたんです。一番高い値段で買ってもらえた。これも弟子の失敗にグッと我慢して任せてくださった師匠の寛大な指導のたまものです」

 3年前に預金2000万円をつぎ込んで建てたハウスで育てたシャインマスカットが、今年から収穫できるという。ただ、黒字化できるのはだいたい10年後。現実は厳しいが、農業を辞めたいと思ったことは一切ないという。むしろ楽しくて仕方ないとも。

「そのおかげだと思うんですが、花粉症が治ったみたいなんです。ストレスフリーだからでしょうね。陸上関係者からも若返ったと言われます。どんだけ陸上がストレスだったのかってね」

 そんなふうに茶化されても木村さんは、ともに汗を流した陸上選手にシャインマスカットを送っている。400メートルなどでパリ五輪に出場した佐藤風雅選手もその一人。「食を通じてスポーツを支援する」活動を今後も続けていきたいという。

 第3回【「人生に疲れたら畑においで」 元サッカー日本代表・石川直宏さんが農家になった理由】では、元サッカー日本代表・石川直宏さんにインタビュー。転機となったリハビリ生活や、数々のアスリートが石川さんの畑を訪れる理由などについて聞いた。

西所正道(にしどころまさみち)
ノンフィクション・ライター。1961年奈良県生まれ。京都外国語大学卒業。著書に『東京五輪の残像』『「上海東亜同文書院」風雲録』『絵描き 中島潔 地獄絵1000日』など。

週刊新潮 2025年5月22日号掲載

特別読物「バレーボール、陸上、サッカー…なぜ『元日本代表』たちは農業に転じたか」より

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