陸上日本代表からシャインマスカット農家に転身! 木村和史さんが語った1年目の“やらかし” 「100万円近い損害が」
「植物は気が付いたら後戻りできない状態に」
木村さんは、父親から口酸っぱく言われていた言葉をかみしめた。
〈暇さえあれば農場に行きなさい〉
「植物はしんどくても動物のように鳴かない。気が付いたら後戻りできない状態になっていることをあらためて痛感しました。六つの棟に2000房あるんですが、その一つでも見逃すとこのようになる。2000分の1の違和感。それを感じ取れるようにならなければと思いました」
即座に消毒するという師匠の対処によりまん延は免れた。師匠がいなければ同じ棟の500房が被害に遭っていた。
「お前、何しに大学来た?」
シャインマスカットには2種類あり、7~8月に出荷する早出しと、9~10月出荷の通常型。木村さんが手がけるのは前者で、日照時間が少ない梅雨に糖度を上げなければならないため栽培が難しい一方、うまくいけば高く売れる。昨年は梅雨に暑過ぎて作物が夏バテし、糖度が上がるタイミングが遅れ、出荷が後ろに数週間ズレ込んでしまった。
「これは先輩の生産者でも初めての経験で、解決策が見つかっていません。温暖化はやっかいです」
温暖化の影響で増加する害虫の対策にも神経を使う。木村さんは単純に農薬を増やしたりせず、有機栽培の腕を磨く。JAが指針を示す農薬などは使うが、量を指定の半分以下に減らし、化学肥料を使わない。
「有機栽培で環境に負荷をかけない農業は、学生の頃から興味がありましてね。陸上の試合の移動中などはそんな本ばっかり読んでいたんです。監督に『お前、何しに大学来た?』とあきれられるほどで。師匠も同じ考え方だから、おからの肥料とかを使っています」
この取り組みはSNSでも発信しており、ECサイト経由の顧客から高評価だという。
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