「インターネットに耽溺し、殺人・解体願望が…」 スポーツ万能、成績優秀だった会津若松「17歳少年」は、なぜ実母の頭部を切断したのか

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“引きこもり”に

“ある不幸な事件”が事件の年の2月7日に起こっている。少年の実家近辺で、雪解けの影響と見られる土砂崩れが発生。実家が半壊してしまったのだ。幸い、死者は出なかったものの、

「(少年の)家は柱も折れ、それは酷い状態でした。辺り一帯の家がやられ、災害以降、十数軒が避難し、今なお仮設住宅で暮らしている住民もいます。少年の一家は、ちょっと離れたところの空き家を借り、そこで生活をしていました」(実家の近所に住む男性)

 また、高校の同級生の証言によれば、

「昨年の夏祭りで、彼が舞台作りのアルバイトをしたとき、爪や髪が汚らしく伸び放題になっていました。どうやら“引きこもり”になっていたようなのです」

 少年には一人の友人もなく、学校で会話を交わすことすらなかったという。

 ***

 事件後、家裁に送られた少年には、精神鑑定が実施された。そして、事件から10カ月が過ぎた2008年2月6日、医療少年院に送致されることが決定した。裁判長は「完全責任能力」を認めつつも、「比較的軽度なある種の精神障害があり」「再犯の危険性を減ずるには治療と教育が必要」と判断し、犯行の全容について、以下のように記している。

<少年はその問題性にもかかわらず、高い知的水準や運動能力を有しており、周囲から問題のない子として受け入れられ、母をはじめ周囲の大人による必要適切な介入を得られなかった。むしろ、少年は、中学2、3年生ころ、他者と距離を置き、表面的な反応で周囲からの刺激を回避できるようになり、問題性改善の機会をますます失った。

 少年は、このころから対人技術の不全から来る不満等を発散させるため、視覚刺激のある死体写真や猟奇的漫画に接して興奮し、それが限局された興味の対象へ特化して、少年の中に殺人・解体願望が芽吹くようになった。少年は、高校進学による環境の変化の中で、その対人技術の不全などから友人を作ることに挫折した上、自己評価を低めていき、不満や寂しさなどを発散する場として、ますます、殺人・解体の空想に傾倒していった。

 さらに、少年は、インターネットに耽溺(たんでき)するようになって、他者との現実的な接触のない昼夜逆転の生活を送るようになってしまい、最終的には不登校になった。そしてこのような生活は、少年の視覚刺激に対する興奮を一段と高め、情性の希薄さや共感性の乏しさを更に際立たせるとともに、少年は、将来への不安などから自棄的な気持ちを強めていった。

 これらの要因が重なり合い、本件非行当時には、少年の中において、そのあらゆる不満、不安などのはけ口としての殺人・解体願望は飛躍的に高まり、ついには臨界点を越え、少年は本件非行に至った>

 それから18年。少年は社会に復帰していることだろう。彼の闇は果たして消えたのか。そして、母を悼む気持ちは芽生えているのだろうか。今年で少年は36歳の年を迎えている。

【前編】では、犯行の詳細を記している。

デイリー新潮編集部

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