ニセモノ論争が浮上した「土偶」の真贋 専門家は「完形の土偶はめったに出土しない」「作り手の個性が出すぎ」と指摘

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贋作師は自分の名前で勝負してほしい

 2018年に東京国立博物館で「土偶展」が開催され、土偶の芸術性に対して関心が高まった。これをきっかけに、土偶に魅せられた人は多かったはずだ。そして、そのなかには「本物の土偶を手にしたい」と考えた人もいるのではないだろうか。

 そんな人の多くが手を出すのがネットオークションだが、望月氏は「『美術の森』の土偶は、ネットオークションに以前から出ていたものと作風が似ている。そもそも、ネットに本物が出品されることは皆無と言ってよく、99%が贋作と思った方がいい」と警告する。現在も偽土偶が何点も出品されている状態だが、事実上の野放し状態であり、取り締まりは行われていない。望月氏は、贋作者の人物像をこのように推測する。

「偽土偶を作っているのは、個人か数人だと思います。噂では、名前は伏せますが、ある特定の人物なのではないかという話にまでなっています。有名な土偶に類似したものが多いので、図録などで見て作っていると思います。私は以前からSNSで贋作に注意するよう発信していますが、ネットオークションで最近も3万円ほどで売れていて、騙されている人がいるのが残念です。

 贋作師たちはブームになる前から土偶を製作し続けているので、これまで相当な人が騙されていることになります。ただ、売れていると言ってもニッチな分野ですから、それほど膨大な売り上げにはならないはずです。もしかすると贋作を作っている人には作家性があり、金儲け云々よりも、純粋に土偶を作りたいと思っているのかもしれません。

 個人で作って楽しむのは自由ですし、作家として名前を出して売れば問題ありません。しかし、それを“縄文時代のもの”と偽るので贋作になってしまう。創作のエネルギーが有り余っているのなら、自分の名前で勝負してほしいと思いますね」

 望月氏は、「土偶が見たいなら、東京国立博物館や各地の公的な博物館などにいきましょう」とアドバイスする。骨董品や美術品などあらゆるジャンルに共通することだが、興味を持ったばかりの人は贋作に手を出してしまう可能性が極めて高い。素人が安易に手を出すのは危険であると心得たいものである。

取材・文=山内貴範

デイリー新潮編集部

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