「トランプ・ショックはむしろチャンスだ」…「高市早苗」議員インタビュー 高関税要求は“令和の黒船”「日本に富を呼び込むきっかけに」

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防衛力の過度な他国依存はリスク

 ――日米間には防衛問題が横たわっている。

 防衛の問題は非常に重要だ。今回の関税を巡る交渉と防衛は切り分けると、石破茂首相もはっきり言っており、そこまで心配していないが、いずれにしても防衛力を過度に他国に依存することは日本にとって大きなリスクとなる。米国内の世論や経済状況など、種々の情勢によって環境が変わり得るためだ。

 そもそも日米安全保障条約には「米国は必ず日本を守らなければならない」とは書いていない。第5条を見ても、日本の施政下の領域への攻撃があった場合には「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するよう行動することを宣言する」と書いているだけだ。

「日米防衛協力のための指針」いわゆる「ガイドライン」に至っては「日本は、日本の国民及び領域の防衛を引き続き主体的に実施し、日本に対する武力攻撃を極力早期に排除するため直ちに行動する」となっている。つまり、最初から米国が助けてくれる規定ではないということだ。さらに「米国は、日本と緊密に調整し、適切な支援を行う。米軍は、日本を防衛するため、自衛隊を支援し及び補完する」とあり、主体的に日本を守るのは自衛隊で、米国や米軍はそれを支援、補完するという位置付けだ。

 米軍による打撃力行使についても、「米軍は、自衛隊を支援し及び補完するため、打撃力の使用を伴う作戦を実施することができる」と書いている。つまり、使うことができるだけで、使ってくれないかもしれないわけだ。こうした状況を鑑みれば、日本は相当な数のスタンド・オフ・ミサイルを揃え、最悪の事態が訪れたとしても、早期に自らの力で防衛できる態勢を整えることが求められる。

 ――もっと詳しく聞きたい。

 日本と英国、イタリアは次期戦闘機の共同開発に取り組んでいる。日本はこれにより、航空自衛隊が運用するF2戦闘機(米国産F16をベースに日米共同開発された機体)の後継機の開発を目指しており、2030年代に配備する方針だ。防衛装備品を開発すると、民生需要にも大変良いスピンオフ効果が出る。例えばF2を日米で共同開発したおかげで、ETC、車載用の自動車の衝突防止装置、骨折用のチタンボルト、物流タグなどが生まれた。経済発展につながる民生用のさまざまな製品、サービスを生み出せる好機であり、共同開発であれ自国による開発であれ、積極的に進めるべきだ。

「モノづくり」を国内にしっかり残す

 ―― トランプ関税の影響を緩和する国内対策が大きな課題だ。

 トランプ関税で大騒ぎになっているが、この状況を否定的に捉えるのではなく、むしろ「令和の黒船」と言うべきチャンスだと受け止める必要がある。これを機会に、部品を含むモノづくりをしっかりと日本に残すため、1ドル=75円台と超円高だった野田内閣(2011~12年)時代に海外に出て行ってしまった日本企業が、国内に帰って来やすい環境を整えるべきだ。

 工業用地におけるインフラ整備にとどまらず、特別高圧・高圧電力の安価で安定的な供給、最先端技術に対応できる人材育成などは非常に大切。トランプ氏も自国のモノづくりをしっかりと育成し、雇用を増やしたいというのが狙いだ。日本も同じように、国益のためには部品を含めた製造業を国内にしっかりと残すことが重要であり、そのための支援が政府に求められる。

 トランプ氏は米国内の農畜産業を守りたいとしている。これも日本に共通することだ。特に日本は海に囲まれた島国であり、99.5%が海上輸送だ。有事などでシーレーンが使えなくなれば干上がってしまう。できる限り国内で食料を調達することができ、かつ、たとえ緊急時には国内消費優先になったとしても、海外に輸出する余力を十分に持った国にしておくことが重要だ。日本のスタートアップが開発した最先端の植物工場や陸上養殖の技術も、海外展開も含めて普及すれば、日本に富を呼び込める。こうしたことにも本気で取り組むチャンスとなる。

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