「契約書は存在せず、金額交渉すらできない」 尾上菊五郎劇団「音楽部」で報酬の搾取、パワハラが 「異を唱えた相手に“仕事を回さない”と」

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異を唱えた部員には“仕事を回さないわよ”と恫喝

 ブラックな労働環境も部員の苦労に拍車をかける。

「公演が始まれば、休演日は月2日しかないので満足に休めません。それで病欠になれば、部員が自ら代役を探し、自腹で出演料を支払うハメになります」(同関係者)

 当然ながら、待遇改善を求めた部員もいたが、

「異を唱えた相手に、巳太郎さんは“仕事を回さないわよ”などと恫喝するそうです。実際、仕事に呼ばれず、報酬を下げられたケースもあったと聞きました。精神的に追い込まれてしまいメンタルクリニックに通う部員や、退部届を出した部員もいたそうです」(同)

 生活を立て直すために演奏の仕事を増やそうにも、

「よそでの仕事は、全て巳太郎さんに話を通す必要があるので、勝手に請け負えない。フリーランスといっても拘束時間はサラリーマンに近い。1年のほぼ全ての月で松竹主催の公演に出演していますから、実質的には専従ですよ」(同)

松竹に通報すると「巳太郎さんによる犯人探しが」

 ついには、たまりかねた部員の一人が松竹への通報に踏み切ったという。

「2年前、本社のハラスメント窓口に訴えたのですが、“他団体のことには口を挟めない”と動いてもらえなかった。しかもなぜか通報したことが巳太郎さんの耳に入り、犯人捜しが始まる有様だったようです」(同関係者)

 そこで部員たちはお金を出し合い、専門の弁護士に相談した結果、今年1月に「音楽部」の法人化に向けて動き出したというのだ。

 一連の事情を知る法曹関係者によれば、

「社団法人となることで、部員全員が代表者を選ぶ権利を持ち、請け負う仕事の内容や報酬も共有できる。契約書も作成するなど、歌舞伎界にとっては新しい試みとなるはずでした」

 ところが、である。松竹へ事前に法人化を伝えて仁義を切り、4月に登記を済ませた部員らに、さらなる試練が待ち受けていた。

 後編【尾上菊五郎劇団「音楽部」で報酬の搾取、パワハラ 法人化に向けて動くも「松竹が話し合いをドタキャン」】では、あたかも法人化を拒むような松竹側の対応について詳しく報じる。

週刊新潮 2025年5月15日号掲載

特集「ちゃんとギャラ払え! 『八代目 尾上菊五郎』襲名披露舞台の陰で内紛勃発」より

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