「契約書は存在せず、金額交渉すらできない」 尾上菊五郎劇団「音楽部」で報酬の搾取、パワハラが 「異を唱えた相手に“仕事を回さない”と」

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「契約書は存在せず、金額交渉すらできない」

 この「音楽部」では、10年前に部長となった八代目杵屋巳太郎(きねやみたろう・59)が全ての権利を独占していた。

「個々の部員は『フリーランスの演奏家』という扱いで、月ごとに基本給がもらえるわけではありません。公演が行われる度に、トップである巳太郎さんの差配ひとつで、部員一人一人の報酬額が決められていた。契約書なんて存在しない口約束の世界で、舞台初日に、その月の報酬を知るという仕組み。金額交渉すらできません」(前出の関係者)

 松竹から「音楽部」へは、1回の公演あたり数百万円の報酬が支払われていたそうだが、巳太郎は“部長特権”を乱用したというのだ。

「音楽部は総勢20名前後の演者がいて、月額の報酬は若手から中堅で30万~40万円台。ベテランだと60万円くらいもらっていたけれど、巳太郎さんだけは数百万円もの報酬を手にしていた。ある月は400万円も受け取っていたこともあったとか」(同)

 あまりに露骨な待遇格差によって、部員たちは生活苦に追い込まれていく。

「巡業に行く度に赤字になる人も」

 彼らと親交のある別の歌舞伎関係者が、こう話す。

「部員たちだって結構な額をもらっている。そう思われるかもしれませんがね。社会保険などにも入っていませんし、普段は交通費から着物代、三味線などの仕事道具も全て持ち出しになります。夫婦共働きでなければやっていけず、公営住宅に引っ越した部員もいます」

 ちなみに、歌舞伎公演は京都の南座や大阪の松竹座、さらには福岡の博多座で行われることもある。旅芸人の一座よろしく菊五郎に同行するわけだが、そこでも苦労が絶えないという。

「地方公演は興行主からホテルが用意されますが、そこに泊まらないといけないので自炊ができない。毎日外食なので、巡業に行く度に赤字になる人もいます」(同)

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