人気ガタ落ち「トランプ大統領とマスク氏」 火消し役の「ベッセント財務長官」が直面する“最大の難関”とは

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ワシントン政治には不慣れ

 ベッセント氏は9日、議会指導部に対し、7月中旬までに連邦政府債務の上限引き上げもしくは債務上限の停止を決めるよう要請した。

 米国の債務残高は既に36兆2000億ドルに達し、法律が定める上限(36兆1000億ドル)を上回っている。財務省は一時的な措置でしのいでいるが、議会が適切な行動をとらない限りは8月に財政資金が枯渇し、米国がデフォルト(債務不履行)に陥ってしまうことが要請の理由だ。

 共和党は米議会の上下両院で多数派だが、この問題が予算案とリンクして議論されているため、調整が難航している。

 共和党の財政強硬派はトランプ氏が公約とした減税(4兆6000億ドル規模)の延長に必要な財源確保のため、メディケイド(低所得層向けの公的医療保険)予算(昨年は6180億ドル、米国人の5人に1人が受給者)の大幅削減を求めているが、同党の穏健派はこれに反対している。

 財政強硬派は債務上限問題をテコに自らの主張を通したいと考えており、ベッセント氏が求める期限までにこの問題が解決する目途は立っていないのだ。

 市場との対話には長けていても、ワシントン政治に不慣れなベッセント氏がこの問題にうまく対処できなければ、世界の金融市場に再び嵐が押し寄せることになってしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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