「瀋陽日本総領事館駆け込み事件」で注目…「ハンミちゃん一家」の母は不倫相手と駆け落ち 新天地・韓国でも襲われていた荒波

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身柄を巡る日中間の対立

〈「放してえ」「助けて」。朝鮮語での女性の絶叫と自動車のクラクション。その喧騒の中に出てきた副領事は、なんと女性を助ける素振りもないまま、警官の帽子を拾い上げるという信じられない行いに出た。〉

 しかも、約1時間後にハンミちゃん一家が武警に連行されたことから、日本政府の弱腰対応に非難が集中する。北朝鮮に強制送還されれば、命の補償はなかった。

〈「彼らが北朝鮮に強制送還されたら、確実に死刑です」。在日朝鮮人の息子として生まれ、北朝鮮に帰国し、36年の生活の後、96年に亡命に成功した宮崎俊輔氏(55)はこう分析する。「北朝鮮には月に2回、処刑の日があるんです。ほとんどが銃殺刑です。今回の場合、これほど大問題になり、国を裏切ったことが明白ですから、確実に反逆罪に問われます」〉

 5人の連行について中国側は、「領事が同意し、かつ武装警察に感謝を表明した」(5月10日、中国外交部報道官の談話)と主張。日本側は、敷地内立ち入りを含めた武警の行動すべてに「日本側が同意を与えたとの事実はない」「感謝の意を表明した事実もない」(5月13日など、外務省の調査結果)と反論し、17日には時系列でも詳細な経緯を明かした。

新天地・韓国で一家を襲った荒波

 この対立は、ハンミちゃん一家の身柄に関する日中間の折衝で大きな障害になった。国際社会からの批判も高まるなか、韓国が一家の受け入れ方針を固める。一家は23日、第三国のフィリピンを経由し韓国に入った。駐韓日本大使の寺田輝介氏(当時)はこの際、一家と面談している。

 一家はその後、韓国に定住し、05年にはハンミちゃんの父キム・グァンチョンさんと母イ・キオクさんが結婚式を挙げたニュースも流れた。だが「週刊新潮」2008年1月3・10日号は、再び訪れた荒波を伝えている。一家と付き合いのある脱北者はこの記事で、3人が06年に米国を訪問し、ブッシュ大統領と面談したことが「大きな転機だった」と指摘した。

〈「北では地位の高い人と会えば、高価な贈り物が与えられ、仲間からは“英雄扱い”されます。おかげで帰国後、ハンミちゃん一家にも取り巻きというか、イさんやキムさんに取り入れば米国に行けるのではと勘違いした脱北者が大勢近寄ってくるようになったのです」〉

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