友人の彼女を奪ったり「妻と寝て」と頼まれたり… 歪んだ恋愛の原点は少年時代に「母」を盗み見た昼下がり
【前後編の前編/後編を読む】「いつか離婚するから…」不倫前提で結婚生活スタート、それぞれに僕の子 真実を知った妻が語ったこと
相変わらず、芸能界の不倫スキャンダルが報じられている。独身者が既婚者とつきあっている場合、既婚者が「倫にあらず」ということをしているのであって(それも結婚をどうとらえるかによるが、現行法制上、不貞行為は民法において離婚事由となり得るとされている。もちろん犯罪ではない)、独身側から見れば決して「不倫」ではない。だが、芸能人のケースでは、清純そうに見えていた女優が既婚者と恋愛疑惑が報じられた瞬間、大バッシングが起こる。視聴者が勝手に抱いていたイメージからはずれることが、その芸能人の今後の活動を左右することになるのだから恐ろしい。たとえどんなにいい役者であっても簡単に潰される。プライベートなことが取り沙汰されたからといって仕事を取り上げられるのは尋常ではない。
【後編を読む】「いつか離婚するから…」不倫前提で結婚生活スタート、それぞれに僕の子 真実を知った妻が語ったこと
「不倫上等」と言い切れないこの国の息苦しさは、何に由来しているのだろう。宗教観でも倫理観でもなく、ただの「いい思いをするヤツは許せない」という嫉妬一択なのではないだろうか。
不倫で怒っていいのは、当事者のパートナーだけである。厳密にいえば、パートナーでさえ怒りはしても裁くことは不可能だ。人は人を裁けない。
今回、話を聞いたのは、井筒秀太さん(43歳・仮名=以下同)だ。
秀太さんはどこか飄々とした雰囲気の長身痩躯の男性だ。めがねの奥の目が常に笑っているように見える。勤務先近くまで行って会ったのだが、「わざわざご足労いただいてすみません」とビジネスの面会のように挨拶し、「変な言い方だな」と自らクスッと笑った。
「不倫……不倫ねえ。僕の場合もそう呼ばれてしまうんでしょうね。いろいろ事情があったんですが、そういう事情は加味されず、一刀両断に不倫だ、悪党だというのはどこか違うような気がするんですよね」
秀太さんの場合、心から愛する人がいた。だが彼女とは結婚できない。だから別の人と結婚する道を選んだ。彼に言わせれば、愛する人がいたのに結婚したことが「不倫」なのではないかというのだ。結婚という形より心を選ぶなら、そういう逆転も生じるのかもしれない。興味深いことを言う人だ。
子ども時代の消せない記憶
彼は東京近郊のサラリーマン家庭に長男として生まれた。父方の祖父、両親、3歳違いの妹の5人家族だった。「ごく普通の、野球が好きな少年だった」と言ったものの、まだ何か言いよどんでいる気配があった。
「子ども時代というと、どうしても僕の中には消せない記憶があるんです。ただ、もしかしたらそれは妄想だったのかもしれない。はっきりした記憶とは言い切れないけど、僕の根幹にある何かに関わっている気はしています」
それは彼が小学校1年生だったある日の午後。学校から帰り、古い一軒家の玄関をガラガラと開け、いつものように「ただいま」と言ったが「お帰り」という母の声はなかった。代わりに地の底から聞こえてくるようなうめき声が響いている。こわごわと居間を覗いたが誰もいない。うめき声は隣の部屋から聞こえているようだが、ふすまはピタリと閉まっている。
「隣は両親の寝室でした。開けるのは怖かったから、少しだけ指を入れて隙間を作って覗いてみた。祖父の背中が見え、母を抱きかかえていました。母の顔は見えたけど、母は尋常ではない顔つきだった。怖くてそれ以上見ていられなくて……」
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