五輪に行けないまま引退するのかな…「フェンシング界の内田有紀」が“2度の代表落選”“1年の無所属期間”を乗り越えて銅メダルを獲得できた理由
無所属を経て感じた、企業に所属する素晴らしさ
その後の宮脇選手は、2022年から1年ほどの無所属期間も経験。パリ五輪を目指す自身の強化費を稼ぐためにクイズ番組に出場し、全問正解で賞金300万円を獲得したことも話題となったが、2023年4月からは三菱電機にアスリート社員として籍を置くことに。
「安定した基盤がある中で競技に取り組める環境は素晴らしいと思いますし、パリ五輪を目指すにあたりなくてはならない存在だったと思います」と感謝の思いを述べた。
晴れてメダリストとなった宮脇選手は、現在は三菱電機の「入社式や研修を担当する部署」に籍を置き、業務にあたっているという。
「今はアスリート社員として行う自身の講演会の準備等が多いですが、昨年行われた入社式の懇親会では、手軽にフェンシングを楽しめる『スマートフェンシング』という端末を使って、競技の体験会を開催しました。人数のハンデを設けて、2人の社員さんと私が対戦しましたが、その日は真剣にやったのに負けてしまって……(苦笑)。今度は勝てるように頑張りたいと思っています」
そして、フリーも経験した宮脇選手は、企業の一員として競技を続ける素晴らしさについてこう続けた。
「私の試合がある時には、会場を埋め尽くすくらいのたくさんの皆さんが、(コーポレートカラーの)赤いTシャツを着て応援に駆けつけてくださるんです。皆さんの声援は力になりますし、温かい気持ちや仲間同士の繋がりも感じられる。その姿を見ると、競技に対するモチベーションも自ずと高まってくるんですよ」
そして心強い声援を背に戦い続ける宮脇選手は、3年後に迫ったロサンゼルス五輪に向けてのさらなる目標も口にする。
「次の大会は、個人種目でのメダル獲得を目指して頑張っていきたいと思っています。これまで以上に大きな壁だと思いますが、そのためには、あと2年くらいの間に各大会のメダル争いに絡んでいけるような選手にならなければいけません。今は、剣の精度を高めたり、剣をしならせて相手の背中を突く『振り込み』という技の習得に力を入れたりしていますが、本番に向けてこれまで以上に、戦いの幅を広げていけたらと思っています」
日本のフェンシング陣は、昨夏のパリ五輪で団体・個人合わせて5つのメダルを獲得し、大躍進を遂げた。
「日本のフェンシングは、近年になってようやくこれまでの強化策が実を結んできた状況です。今大会で活躍した選手は、まだまだ若い選手が多いですから、この勢いそのままに3年後も皆さんの期待に応えられるように頑張っていきたいです」
新たな世界の壁に挑む宮脇選手の戦いは、まだまだ始まったばかりだ。
第1回【「お嬢様学校」から偏差値76「慶應高校」に進学 フェンシング銅メダル「宮脇花綸」が明かす「2つの母校」に支えられた競技生活】では、宮脇選手がいかにしてフェンシングと学業を両立させ、難関校への進学を果たしたのかについて本人が語っている。
[3/3ページ]

