TBS「キャスター」が視聴率苦戦中 「阿部寛」奮闘も…脚本に感じる「最大の難点」とは

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コメディにするべきだった

林:報道局長役の岡部たかしもそうです。「エルピス―希望、あるいは災い―」(フジテレビ/カンテレ制作)のチーフプロデューサー役で名を上げたのに、局は違えど報道局長にまで出世したのに見せ場がありません。また、初回の冒頭に阿部さんの父親役で登場した映画「侍タイムスリッパー」の山口馬木也は、今後ドラマのバックグラウンドに大切な登場人物となるのでしょう。しかし、そこまで見ている人がいるかどうか。これももったいない。

――「キャスター」はどうすれば良かったのだろう。

林:コメディ方向に振り切ったなら、もっと見られる代物になったと思います。アメリカには「TVキャスター マーフィー・ブラウン」やブラック極まりない映画「ネットワーク」のようにテレビを笑う、ニュースで笑うコメディの成功例がいくらでもありますが、日本ではテレビモノ、報道モノはシリアスに作ってはコケてを繰り返してきました。いや、ありました。TBSには田村正和・主演の「パパはニュースキャスター」(1987年)という稀有な成功例がありました。せっかく阿部さんを呼んだのですから、そっちに走ったほうが良かったかもしれません。

――これまで阿部はシリアスなドラマでも成功してきた。

林:日曜劇場でいえば「新参者」にせよ「下町ロケット」にせよ、ベストセラー小説というリアリティがあって、きっちり組み上げられたストーリーのある作品ばかりです。オリジナル脚本の「キャスター」とはそこが大きく異なります。もし阿部さんにエグい芝居をやらせてみたいという意図があるのなら、それならますますストーリーに一貫性がないとキャラクターは分裂分散するばかり。「キャスター」ではまさにそれが起こっているということになります。

林操(はやし・みさお)
コラムニスト。1999~2009年に「新潮45」で、2000年から「週刊新潮」で、テレビ評「見ずにすませるワイドショー」を連載。テレビの凋落や芸能界の実態についての認知度上昇により使命は果たしたとしてセミリタイア中。

デイリー新潮編集部

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