TBS「キャスター」が視聴率苦戦中 「阿部寛」奮闘も…脚本に感じる「最大の難点」とは
フラスコのフタがアルミホイル
林:昔なら「マンガじゃん!」と言われてバカにされるパターンですが、今ではあり得ない展開です。iL細胞が完成した証拠が青く光るというのもどうでしょう。論理が成り立ちません。そして台詞も、日本語として薄い。“科学の真理”とか“私利私欲”なんて中学生の青年の主張のような台詞を平然と阿部さんに喋らせている。あれほど建前を嫌い、毎日がエイプリルフールというようなジャーナリストが、真顔で綺麗事の台詞を話す。言葉の使い方に再考が必要だと思います。
――再考が必要なのは小道具にも……。
林:利重の研究室では科学誌「セオリー」のコピーを机に置いて研究者たちがiL細胞を再現しようとしているのですが、今の時代、紙なんか配りませんよ。みんなタブレット端末でしょう。また、のんの研究室は古くて汚い。iL細胞を培養する三角フラスコにアルミホイルでふたをしていました。農業高校の培養じゃないんですよ。非現実的すぎます。
――阿部がキャスターを務める「ニュースゲート」の報道も非現実的だ。
林:のんの独占インタビューを放送した直後に彼女のデータを告発するVTRを流してスタッフたちが大慌てになるわけですが、これまで第1話、第2話で散々揉めてきた新キャスターの阿部さんが勝手に持ってきたVTRを誰もチェックせずに放送するなんてあり得ないでしょう。
――だから心配だというのだ。
TBS報道局は怒らないのか
林:かつて“報道のTBS”といわれたTBSのドラマなわけです。TBSの報道の信頼にも関わってくるかもしれません。
――阿部にとっては黒歴史になりかねない。
林:阿部さんがいなければ成り立たないドラマですが、もったいないことが多すぎます。まず、阿部さんとコンビを組むことになる永野芽郁。バラエティ班から左遷されて報道に来たという総合演出なのですが、そもそも20代で報道番組の総合演出という立場に無理があります。それに、総合演出的なことは全くやっておらず、プロデューサーとキャスターの間に立って右往左往するディレクターに過ぎません。ヒロインとして魅力を感じません。これまで阿部さんと若手女優のコンビには成功のセオリーがありました。「TRICK」の仲間由紀恵、「ドラゴン桜」なら長澤まさみ、映画「テルマエ・ロマエ」なら上戸彩といったように、阿部さんと組むことで成長した、あるいはスターになった例があったわけです。もっとも、いずれの作品もコメディでしたが。
――もったいないキャスティングは彼女だけではない。
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